広瀬倫子

 歌の魅力を大人に再提案するためにさまざまな作品を世の中に送り出しているのがエイジフリーミュージックレーベルだ。そのなかでも力のある人気作詞家・作曲家を次々と巻き込みながら、独自の世界観を広げつつあるのが歌手・広瀬倫子。改名デビューから7年、今回のシングル「愛を舐めるな」では、作詞・及川眠子、作曲・来生たかおのゴールデン・コンビが曲を提供した。6月27日には渋谷で記念コンサートを行う彼女に今の想いを聞いた。

【ジャケット写真】広瀬倫子の新曲「愛を舐めるな」

◆強烈な及川眠子先生の詞、自分の中で封印していた今だから歌える愛の世界

 エイジフリーミュージックとは、音楽評論家・富澤一誠氏が提唱する世代を超えた音楽のこと。その理念を形にしたのが広瀬倫子の歌だ。そのため、彼女はさまざまな作家との楽曲コラボを実現してきた。岡田冨美子、鈴木キサブローコンビによる「償いの日々」、レーモンド松屋「生まれ変わって」、高見沢俊彦の平成GS歌謡「恋の誤算」、尾崎亜美「月を見つめて哭いた」などなど。そして令和初のシングルとなるのが「愛を舐めるな」となる。愛する男に裏切られ続けた女性の心が歌になった。「鬼は内 甘い夢は外 女心と愛を舐めるな」とメラメラと燃える情念の世界を及川眠子氏が描く。心をえぐるような詩が強烈だ。

「この詞を初めて読んだ時に、自分で蓋をしていた感情の扉をこじ開けられたような、昔の手紙をタイムカプセルから取り出して読んだような気持にとらわれてしまいました。自分でも若い時に、同様の世界観を詞にしたことがありまして、でもそこにとらわれてしまうと歌どころではなくなる自分がいるので、その世界は封印していたんですね。今だから歌える歌なのかなと思います。及川眠子さんの詞は本当に強烈ですよね。でも、来生さんのメロディーは、それに惑わされることなく冷淡で美しく、詞の生々しさを突き放している。そんなところがこの作品の魅力だと思います。レコーディングでは、私自身はそのサウンドに寄り添おうと思って、少しヨーロッパ風のクールな歌い方にしようと思ってました。それがうまく言ったので、これでいいかなとスタッフと話しているところに及川先生が登場しまして。「いいけれど、もっとドスを効かせた方がいいんじゃない?」っておっしゃったんです。「広瀬倫子という名前はまだまだ知られていないでしょ」と言われてサウンドと歌詞の間で自分なりの回答を歌い方にしたのが今回の作品になるんです」

 今作ではPVも話題だ。海外でも人気の足長パフォーマー、スティルタンゴの2人が登場し、映像に不思議な異国感を与えてくれる。

「プロデューサーが、彼らの存在って不思議でいいよねって。私も足長巨人と私の対比が面白いかなと思って、撮影への参加をお願いしました。仕上がりを見ると、アレンジのイメージにピッタリ合っていると思います。本当は、ジャグラーとかアコーディオンとかヨーロッパの夜の大道芸の世界をもっと出せれば良かったと思いますが。予算の関係もあって断念しました。あと今回は写真がすごくいいんです。目の下に赤いタトゥーを入れたんです。主人公の内面の毒がにじみ出た感じですかね。あまり理屈で言わなくても、こいつ何か企んでるなという女性の心の二面性がわかるんじゃないかな」

◆得意技を封印。目利きの作家陣の包丁さばきにまかせる

 ところでエイジフリーミュージック。CDの売れ行きが芳しくない昨今、ディスクの中の音楽に慣れ親しんだオトナ世代に向けて、良質な大人の音楽、世代を超えたヒット曲を提供しようという試みである。特に広瀬倫子はそのイメージリーダーならではの苦労もあるようだ。

「最近CDが売れませんよね。身近な人たちを見ていても、CDを聞けない環境の人がますます増えているなと感じます。そういう意味では時代の流れに逆らっているのかもしれませんが、時代に流されない大人向けの作品を作って世代を超えたヒット曲を作ろうという理念はとても共感できるものですし、私はその中で何をできるのかを常々考えるようにしています。もともと若い頃には多岐にわたる音楽活動をやっていたんです。当然シンガー・ソングライターとして自分の歌いたいことを自分の自由なボーカルで歌うという時代も長くあったんですね。その長い間で身につけてきた、楽な歌い方、表現、やり方、手法、などをあえて封じているのが今の私なんです。プロデューサーは「広瀬倫子のこれまでの得意技を封じて、いったん素材の段階に戻ってもらう。そこにプロフェッショナルで目利きの他人(曲ごとの作家陣)の包丁さばきが入ることによって、本人が気づかなかった魅力を引き出してもらい、きちんと料理していただく。そうすると、そこに新たな魅力が生まれることになる」と表現してくれましたが、まさに歌いまわしやリズムの取り方、スキャットボイスなど、すべてをまっさらな状態に戻すところから始めました。大変でしたが、それまでとは違う自分になったと感じるところはすごく多いですね」

 さて、大人の歌の歌い手としての広瀬倫子はどこに進むのか。その答えの一端は彼女のライブ活動にある。定期的に行っている「広瀬倫子~歌謡の宴」は、まさに誰もが楽しめるものを目指しているエイジフリーの理念を具現化、世代を超えて楽しめるひとときとなっている。

「ライブでは、今回のシングルカップリングの「魂のルフラン」で素敵な演奏を聞かせてくれるリンコスタのメンバーと、自分の持ち歌だけでなく、昭和の名曲も独自アレンジで歌うことにしています。毎回プロデューサーからテーマが出されて、それに合った昭和の名曲を歌うんですが、私の現在の曲と並列でJAZZアレンジで昭和の名曲が並ぶと違和感はなく、お客様にも大変好評なんです。たぶん一番大変なのはアレンジをしてくれているバンドリーダーのひび則彦さんじゃないかと思いますが。何しろ振り幅が広くて、松田聖子さん「天使のウインク」から小柳ルミ子さんの「おひさしぶりね」、「仮面舞踏会」から「ペガサスの朝」まで歌いますからね。でも、こういった試みの中から少しでも多く音楽の楽しさを味わっていただければいいと思っています」


徳島新聞Webの「エンタメ(オリコン)」は、記事提供会社からの情報を加工せずに掲載しています。このサイトに掲載している記事の品質・内容については、徳島新聞社は保証せず、一切の責任を負いません。また掲載されている文言、写真、図表などの著作権はそれぞれの発表者に帰属します。徳島新聞Web上のデータの著作権は徳島新聞社に属し、私的に利用する以外の利用は認められません。記事についてのお問い合わせは提供会社までご連絡ください。