毎年このキャンペーンを新聞広告などで見るたびに、その太っ腹さに驚かされる。金ちゃんヌードルの製造で知られる徳島製粉(徳島市南二軒屋町)が行っている「現金1万円が当たるキャンペーン」。抽選で計2500人に1万円が当たり、賞金総額は2500万円に上る。始めてから20年を超え、景気の動向や売り上げに変動があっても続けてきた。「大手と違うことをしなければ、地方の企業は生き残れない」。そこには、脈々と続く会社の心意気がある。

キャンペーンは毎年、2月下旬に開始。3~7月の各月に締め切りを設け、年5回抽選会を開いている。1回の抽選で500人の当選者を決め、1万円を送っている。金ちゃんヌードルの底面に貼られている「キンツル(金鶴)マーク」のシールを5枚集めると、応募できる。 

始めた当初の応募総数は2、3万枚だったという。当たる人が増えるにつれ、各地で話題になり口コミで存在が知られるようになった。東日本大震災が発生した2011年は、即席麺が多く出回ったこともあり、応募総数は15万通を超えた。近年は13~15万通程度で推移している。

 人気ぶりとともに目を引くのが、応募者の住所だ。多いのは静岡県など東海地方と、沖縄県。東海地方はかつて営業活動が盛んで、売り上げを伸ばしたという。沖縄県では、本土復帰後いち早く販売に乗り出し、人気を集めた。沖縄の食品卸会社の担当者は「沖縄の人が好む味だったためではないか」と話す。

キャッシュレス化が叫ばれる中、現金の「1万円札」を送るという昔ながらの手法を続けている。多数の応募があるのは、現金への魅力もさることながら、「金ちゃんヌードル」そのものが根強い人気を保ち続けている証拠だろう。コシが強く、食感が硬い麺が特徴で、カップのふたがきちんと閉まり、出来上がり後も冷めにくい。そうした工夫が秘訣のようだ。数多くの即席麺が出回る中で、人気を維持し続けるのは容易ではないだろう。

 ちなみに、私も金ちゃんラーメンのファンの一人であり、キャンペーンにも応募したことがある。ただ、残念ながら当選したことはない。今年の応募期間は7月25日まで。(卓)