石積みとアジサイの花のコントラストが美しい棚田=那賀町木頭

 山の斜面に築かれた棚田や段々畑。山の多い徳島県ではなじみの光景だが、きちんと管理されて今も耕作が続いている場所は意外と少ない。

 山間部では人が減り、農業離れも進む。山を削って整備した田畑であっても、雑草が生い茂り、スギやヒノキの植林地に様変わりすることもある。

 那賀町の坂州木頭川に沿う国道193号を進んでいた道中、思わず車を止めた。山の傾斜地に築かれた棚田の石垣や、その最下段に咲く色鮮やかなアジサイに目を奪われた。

 草が刈り取られ、見事に手入れされた石垣の表面をうっすらとコケが覆っている。ごつごつとした自然石を積み上げたさまは、棚田の歴史を物語るようで見応えがある。

 しげしげと眺めていて、棚田の構造はどうなっているのかと気になった。調べてみると、答えは木沢村誌(1976年刊)の中にあった。

 石垣を積み、その内側の最下段に50センチほど粘土を詰めて基礎にする。その上に床土(有機物を含む水はけの良い土)、稲などの作物を植える表土を順に入れるのだという。

 棚田や段々畑は先人の知恵の結晶とも言える。技術が完成するまでの積み重ねを考えると、美しい光景の中にある奥深さに気付かされる。