開発したふりかけを使った料理を持つ澁谷さん(左)ら=徳島市の城西高

開発したふりかけを使った料理を持つ澁谷さん(左)ら=徳島市の城西高

 徳島大大学院と城西高校(徳島市)は、がん患者の味覚異常を改善するふりかけを共同開発した。うま味を感じる舌の受容体を増やす効果があるグルタミン酸ナトリウムに県産のスジアオノリを合わせて食べやすくした。同大は今後、企業と協力して商品化を目指す。

 徳島大によると、がん患者が特定の抗がん剤を使うと食べ物の味を感じにくくなるが、詳しい原因は不明だった。味覚は約1カ月で自然に回復するものの、この間は食事量が減るなどして生活の質や栄養状態が低下する。

 同大大学院医歯薬学研究部の堤理恵助教らは、同大病院耳鼻咽喉科と共同でがん患者約70人を調査。抗がん剤の影響で舌の表面でうま味と甘味を感じる受容体「T1R3」が減少し、味覚に異常が起きることが分かった。同時に、T1R3は、うま味調味料に使われるグルタミン酸ナトリウムを摂取すると増えることも突き止めた。

 ただ、グルタミン酸ナトリウムにはえぐ味があり、多量に口にするのは難しい。堤助教らは、えぐ味を紛らわせる食材を混ぜたふりかけを開発しようと、食品製造技術を持つ城西高に2015年11月に協力を要請。食品科学科の生徒2人が、吉野川で取れたスジアオノリや、かつお節を使ったレシピを完成させた。

 15日に同校で試食会があり、関係者約40人がふりかけを使った卵かけご飯と焼きそば、サンドイッチを味わったところ、「ノリの風味が良くおいしい」などと高評価が相次いだ。

 同大大学院と県内の高校が実用的な分野で共同研究するのは初めて。城西高3年澁谷暢大さん(18)は「医療の視点から学ぶことができて刺激になった」と話した。堤助教は「ふりかけが患者の食事を支え、治療を耐え抜く力になれば」と述べた。