徳島新聞の看板コラム「鳴潮」

 来春入社予定の就職活動が佳境を迎えている。リクルートスーツに身を包んだ学生たちを見掛けると、自分の就職活動を思い出す。それには理由がある。最終面接で、徳島新聞の看板コラム「鳴潮」を読み間違えてしまったからだ。

 当時の記憶では、筆記試験などを経て迎えた最終面接は、学生何人か一つのグループになり、前には社長ら役員が座っていた。緊張と、「鳴潮」を読み間違う失態の影響で、あまりやりとりは覚えていない。恐らく志望動機や学生時代に取り組んだことなどが聞かれたのではないかと思う。以下は、はっきり覚えている。社長が私に「君はどんな記者になりたいんだね」と聞いてきた。私は熱意を示す勝負所と思ったのかもしれない。これまでよりやや大きな声で「はい、『なるしお』(鳴潮)が書けるような記者になりたいです」。一瞬、間があった後、社長はこう切り出した。「君、あれは『めいちょう』(鳴潮)と読むんだよ」。鳴潮といえば毎日1面に掲載している会社の看板というべき存在。私はその場から逃げ出したいぐらい恥ずかしかった。私は「やってしまった。終わった」と悔やみながら会社を後にしたことは、何年たっても忘れない。

 入社試験の結果は、今私が徳島新聞社にいるということで分かってもらえるだろう。「二度と来ることはないかもしれない」と思った社屋で、働かせてもらっている。「新聞記者になって地域のために貢献したい」。そんな熱意が伝わっていたのかもしれない。

 その時々の経済情勢などによって環境は大きく変わるものの、就職活動はしんどくて長い。自分は何がしたいのか明確な方向性も定まっておらず、本当にこれでいいのかと思うこともあるだろう。失敗することがあっても、取り返せることもある。迷いや不安は絶えないかもしれないが、自分に問い掛け、自分で決めていくしかない。

 就職活動に励んでいる学生を見掛けると、つい心の中でつぶやいてしまう。「最後まで諦めず、頑張れ、頑張れ」。「地道」という道の先には、未来が待っている。(卓)