東京一極集中を是正するという安倍政権の方針に沿い、徳島県が官民挙げて要望を続けてきただけに、失望を禁じ得ない。

 地方創生の一環と位置付けられている政府機関の地方移転について、政府が、徳島県への消費者庁の全面移転を見送る意向を固めたことが分かった。

 政府は、県庁内に試験的に設置した「消費者行政新未来創造オフィス(徳島オフィス)」で移転の可否を検討したものの、国会対応や省庁間調整に支障があるため、全ての機能を移せないと判断したという。

 そうならば、省庁移転に対する政府の本気度を疑う。

 県が消費者庁誘致を提案した2015年以降、政府は長官を神山町に5日間滞在させて課題の洗い出しを行い、17年7月に徳島オフィスを開設して試験業務を続けてきた。

 先月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生基本方針」には、徳島オフィスを来年度から常設化して機能充実や規模拡大を目指す考えが盛り込まれている。

 省庁移転は最終的に、42道府県が計69機関の移転を提案した。しかし、省庁単位での移転は京都府への文化庁だけになる公算が大きい。

 文化庁の移転にしても、国会対応など一部の機能は東京に残し、京都に移すのは全体の7割になる見通しという。文化庁は移転でき、消費者庁ができないのはなぜなのか。

 国会対応や省庁間調整のほか、消費者庁移転の課題として強調されているのは、事業所対応の問題である。事業所が首都圏に集中しており、地方へ移転すれば支障を来すという。こうした事情は最初から明らかであり、どう乗り越えるかの手だてを見いだすことが求められていた。

 ところが、神山でも徳島オフィスでも、全面移転を想定した検証は十分に行われなかった。一体何のために、実証試験に長い時間を費やしたのか。そんな姿勢で課題を克服できるわけがなかろう。

 省庁の地方移転は過去に何度か持ち上がったことがあり、1990年には衆参両院が国会と政府機能の移転を決議した。だが官僚の反発が強く、国会や省庁本体の移転に結びついたことはない。

 今回は「一強政治」の力で、移転実現が相次ぐとの観測が当初あった。東京一極集中がますます深刻になる中、徳島への消費者庁の全面移転は是正の象徴になったはずである。好機を逸したと言わざるを得ない。

 政府は2023年度をめどに、省庁移転の総括的な評価を出すことにしている。

 飯泉嘉門知事は、県議会6月定例会の代表質問で今後の対応を聞かれ「消費者庁が省に格上げされるよう後押しする中で、徳島への全面移転につなげたい」と述べた。

 東京一極集中の是正は、人口減に苦しむ地方の願いである。政府は、もっとやる気を見せるべきだ。