自民、公明両党に日本維新の会などを加えた「改憲勢力」が3分の2を確保するかどうか。それが今回の選挙の焦点の一つである。

 衆院は3分の2を超えており、改憲を両院で発議できる環境が維持されるからだ。

 ただ、憲法のどこをどう変えるのかについては、意見が分かれている。改憲に反対する党もある。

 難しいというイメージがつきまとう憲法だが、私たちの生活に深く関わる最高法規だ。それぞれの主張に耳を傾け、しっかりと判断したい。

 大きな論点となっているのは、自民党が掲げる「自衛隊明記」案である。戦争放棄や戦力不保持を定めた9条1、2項は変えず、新たに「9条の2」を設けて自衛隊を規定するというものだ。

 改憲を悲願とする安倍晋三首相は、自衛隊を巡り「憲法学者の7割は違憲の疑いがあると言う」と強調し、「違憲論争に終止符を打つ」と訴える。自衛官が息子から「お父さん、憲法違反なの」と涙ながらに尋ねられたとのエピソードも紹介している。

 単に「自衛隊」を書き込むだけのように見えるが、実はそうではない。

 9条の2のイメージとして自民党憲法改正推進本部が昨年まとめた条文案は、日本の平和と独立を守り、国や国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げないとし、そのために自衛隊を保持するとうたっている。

 これに対して、立憲民主や国民民主、共産、社民各党は、2015年に安倍政権が成立させた安全保障関連法と相まって、自衛隊の活動範囲が無制限に広がりかねないと反発している。

 安保関連法は、日本が直接攻撃を受けていなくても一定の条件があれば武力を行使できるとした。条文案のように「国民の安全」や「必要な自衛の措置」を名目にすれば、違憲の疑いが強い集団的自衛権の行使に歯止めがなくなるというわけだ。

 与党の公明党も自衛隊明記には慎重な姿勢を示す。「多くの国民は自衛隊を違憲だと考えていない」とし、「違憲論争に終止符を」との訴えに疑問を呈している。

 自民党は、このほか▽緊急事態条項の新設▽参院選「合区」解消▽教育充実―を改憲項目に挙げている。公明党は地球環境保全の責務の規定などを加えるべきだとする。

 一方、安倍政権下の改憲に否定的な立民と国民両党は、衆院の解散権制約や国民の権利拡大などを提案。維新の会は教育無償化や道州制の実現を含む統治機構改革などを掲げ、共産、社民両党は改憲は必要ないと主張している。

 憲法の改正は国の将来を左右する重大な問題である。それ自体を目的化したり、本当の狙いを曖昧にしたりすることは許されない。各党は議論を深め、分かりやすく国民に示してもらいたい。