10月の消費税増税を巡って、与野党が真っ向から対立している。

 政府が予定通り10月に税率を10%に引き上げる方針なのに対し、野党は凍結や中止を訴えている。

 税率5%から10%への段階的な引き上げは、民主党政権時代の2012年に法律で定められた。ところが、安倍晋三首相は8%から10%への増税を2回延期した。いずれも選挙対策の色合いが濃い。

 国は一般会計予算100兆円のうち、6割しか税収で賄えない状況にある。歳入不足を補う国債を発行し続け、19年度末には国と地方の長期債務残高は1122兆円に上る見通しだ。

 膨らんでいく社会保障費の財源確保と財政再建という命題からはもう逃げられない。各党は具体的な道筋を示さなければならない。

 与野党の主張の根本的な違いは、日本経済の現状認識にある。

 安倍首相は「デフレではない状況を達成した」と、増税できる経済環境にあるとの見方を示す。一方、野党は消費や賃金が低迷する中、家計を直撃する増税は景気悪化が懸念されるとする。

 5年前に税率を5%から8%に引き上げた際に、個人消費が落ち込み、債務を拡大させてしまった苦い経験がある。2度の延期を経てこのタイミングで増税する安倍政権の判断が問われよう。

 与党は消費の冷え込みを防ぐため、飲食料品や新聞などの税率を据え置く軽減税率を導入。キャッシュレス決済によるポイント還元、プレミアム付き商品券発行など2兆円超の景気対策を打ち出している。ただ、どれほどの効果をもたらすかは不透明だ。

 また、全世代型社会保障の構築に向け、増収の一部を教育無償化に回すため、財政再建から遠のいてしまう。

 安倍首相は、昨年度の税収がバブル期を超える過去最高の60兆円超になったのを根拠に「今後10年程度は消費税を上げる必要はない」と言う。

 しかし、25年に団塊の世代が75歳以上になるなど、今後10年の間にも社会保障費の増大が避けられないのは明らかだ。増税への反発を和らげるためだろうが、無責任ではないか。その場しのぎの発言としか聞こえない。

 野党は、消費税増税の代わりに、大企業や富裕層への課税の強化、議員定数の削減などを訴えている。

 余裕のあるところに負担を求めるのは理解できる。だが、法人税や高額所得者の所得税を引き上げれば、競争力やモチベーションが落ちたり、海外への流出を招いたり、経済の活力を失ってしまう恐れがある。

 これまでの与野党の議論は、厳しい現実に背を向け、聞き心地の良い言葉を並べている感がある。責任ある将来像を示し、負担増の痛みを真正面から語るべきである。