国際秩序を揺るがすトランプ米政権への世界各国の懸念を横目に、安倍晋三首相はトランプ大統領との蜜月ぶりをアピールするなど、日米同盟の強化にまい進してきた。

 ところが、トランプ氏は貿易交渉での強硬姿勢と併せ、安全保障条約についても「片務的だ」などと言及、日米間に不透明感が漂っている。

 加えて、首相が意欲を見せていたロシアとの北方領土交渉や拉致問題を抱える北朝鮮との交渉も停滞したままだ。

 自民党は公約のトップ項目に安倍外交を掲げるものの、論戦は深まっていない。有権者は安倍外交の実績を見極め、冷静な目で評価する必要がある。

 安倍首相が選挙演説で、自らの成果としてアピールしているのが、6月下旬に開かれた20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)だ。

 確かに、国際的なデータ流通の促進や、プラスチックごみの海洋投棄ゼロなどで各国の共通目標をまとめ上げた功績は小さくない。

 米中貿易摩擦が懸念される中、トランプ氏と習近平国家主席との首脳会談が実現し、協議の継続で合意したことも議長としての首相の評価を高めるものとなった。

 ただ、こうした成果よりも際立ったのがトランプ氏への忖度だ。

 サミットの首脳宣言で懸案となっていた「保護主義と闘う」との文言は結局、盛り込まれなかった。トランプ氏の反発が予想されたためだ。

 また、日本側の負担増を求めて安保の見直しに言及したことに対しても、首相は首脳会談で真意をただそうとしなかった。怒らせれば日米関係に影響を及ぼしかねない、との判断が働いたからとみられている。

 トランプ氏との個人的な関係に頼る日米同盟の現状を憂慮する声は多い。毅然とした対応が望まれる。

 サミットに合わせ、首相は各国首脳と会談した。中国の習氏とは良好な関係をアピールしたが、ロシアのプーチン大統領との交渉では進展がなかった。険悪な関係にある韓国の文在寅大統領とは会わずじまいだ。

 解決の先送りが目立つようになった。この状況をどう打開するのか、具体的な道筋を示すべきだろう。

 世界の各地域が不安定な情勢にある。とりわけ、深刻なのが米国とイランの対立が激化している中東だ。

 米政権はホルムズ海峡付近での民間船舶の安全確保のため、同盟国の軍と有志連合を結成する考えを表明した。イラン包囲網を狙ったものだ。

 日本にとってはエネルギー調達で死活的に重要な地域である。一方で、日本はイランとも友好関係にある。どう対応すべきか。

 差し迫った問題だ。安倍政権はもとより、各政党も早急に検討し、方針をしっかりと語ってもらいたい。