映画「聲の形」(山田尚子監督)は、他者との関係の中で傷つき、孤立し、自分の存在の意味さえも見失っていた少年が、固く閉ざしていた心を、再び生まれた他者との関係の中で開いていく物語だ

 聞こうとしなければ絶対に聞き取れない、さまざまな声の形がある。人は、人とのつながりの中でしか、その生をまっとうできない。「君に生きるのを手伝ってほしい」。少年は感情をほとばしらせた・・・。京都アニメーションが制作した、繊細な映像の、心を打つ佳作である

 「涼宮ハルヒの憂鬱」「けいおん!」など、多数のヒット作を生み出してきたアニメ会社の、京都市内のスタジオで一体何があったのか。3階建てのビルは炎に包まれ、これまでに33人の死亡が確認されている

 警察によると、入ってきた男がガソリンのような液体をまき、火を放った。現場にはハンマーや包丁も残されていた。多数の殺害をいとわない犯行であることは疑いようがない

 今回の事件との関連性は不明だが、作品や制作者に対するクレームや脅迫がしばしば会社に届いていたという。表現に対する抗議のつもりだったか

 日本のアニメを背負う大勢の人たちの未来がこうした形で突然、奪われてしまうとは。暴力で、何をどうしたかったのか。被害者の無念を思えば、犯人に向ける声の形が怒りでゆがむ。