被害者は日本のアニメ界を背負って立つ人材だったという。その死を悼むとともに、けがをした人たちの一日も早い回復を祈りたい。

 アニメ制作会社「京都アニメーション」第1スタジオ(京都市)が放火され、3階建ての建物が全焼。放火事件の犠牲者数としては、平成以降では最悪となる34人が死亡した。

 京都府警によると、現場近くで確保した41歳の男が「ガソリンに火を付けた」と放火を認める供述をしているという。「小説を盗んだから、やった」といった趣旨の話もしたようだ。

 府警は、男が同社へ一方的に恨みを募らせ、事前にガソリンやライター、刃物を用意し、計画的に大量殺傷を図った疑いがあるとみている。

 どんな理由があろうと、容疑が事実であれば、許されることではない。警察は早期の全容解明へ全力を挙げてもらいたい。

 京都アニメーションは、京都府宇治市で1981年に創業した。「京アニ」の愛称で親しまれ、東京に拠点が集中するアニメ業界の中で、京都から作品を発信し続けるユニークな会社として知られる。「涼宮ハルヒの憂鬱」「けいおん!」、映画「聲の形」などヒット作は多い。

 一方で、同社ホームページに昨年、殺害予告があり、府警も威力業務妨害容疑で捜査中だった。今回の事件との関連は不明。来客があったため、普段は閉じている建物入り口の鍵を解除していたといい、犯人はこの隙をついた。

 放火で多数の被害者が出た事件は、過去に▽2001年5月、青森県弘前市の消費者金融支店に押し入った男がガソリンをまいて放火、社員5人が死亡▽08年10月、大阪市の個室ビデオ店で男が放火し、客16人が死亡―といった例がある。

 今回の事件では、大量のガソリンがまかれ、火が瞬く間に広がった。スタジオは1階から3階にかけてらせん階段があり、火が回りやすい構造だった。

 京都市消防局によると、昨年の査察で、消防上の不備は見当たらなかった。11月には消防局立ち会いの下で、消火・避難訓練を実施し、従業員約70人が参加していた。

 それでも多数の犠牲者が出たのである。どうしてこうした事態となったか。防火対策の視点からも、十分な検証が必要だ。

 日本のアニメ・漫画は国内外で評価が高く、観光面でも訴求力がある。本県のイベント「マチ★アソビ」のにぎわいを見ても明らかで、政府は「クールジャパン」の筆頭格に位置付けているほどだ。

 中でも京アニは、質の高い作画技術で知られ、インターネットには被害者を悼む海外からの投稿も相次いでいる。

 志を抱き全国から集まった多くの若者の死は、日本のアニメにとって大打撃に違いない。業界は力を合わせ、難局を乗り切ってほしい。