徳島にいながらも、広島や長崎の被爆の歴史に触れる機会はある。

広島県商工経済会(現・広島商工会議所)望楼から撮影。中央左寄りに広島県産業奨励館(現在の原爆ドーム)が見える=1945年10月5日(林重男撮影/広島平和記念資料館提供)

  県内「原爆展」開催中

 「ヒロシマ原爆展」(県遺族会、広島市など主催)は、徳島市の県立21世紀館と県戦没者記念館(雑賀町東開)で開催中。広島平和記念資料館所蔵の被爆者の遺品など約150点を展示している。

 21世紀館は30日まで、戦没者記念館は8月7日まで。入場無料。

 広島舞台の映画 テレビで放映へ

ⓒこうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

 戦時中の広島を舞台にしたアニメーション映画「この世界の片隅に」(16年公開、原作・こうの史代)が、8月3日午後9時からNHKで全国放映される。広島県呉市に暮らす女性が主人公。日常を戦争が壊していく様子を描き、ロングランヒットした。

 12月20日には、本作に30分のシーンを追加した新作「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」が全国で公開予定だ。

 

 語り継ぐ伝承者 学校などを訪問

 広島と長崎の被爆者の体験を語り継ぐ伝承者が、全国の学校や団体の学習会に無料で訪れ、講話している。費用は厚生労働省の負担。

 問い合わせ・申し込みは国立広島原爆死没者追悼平和祈念館<電082(207)1202>、国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館<電095(814)0055>。

 

 編集後記 「父の生家が原爆ドームの隣にあった」「祖父が被爆した」―。広島で出会った人たちとの会話からは、原爆と関わる家族の過去が出てきました。74年前の出来事は、今と切り離された昔話ではありません。

 細川浩史さんは「被爆のことはあまり話したくなかった」と言いました。哲学者の鷲田清一は、インタビューの目的の一つは、口にしたくない苦しい体験を「そのひと独りに背負わせるのではなく、ひとつの『証言』としてみなで背負う」ことにあるとします。その体験は、ほかの誰かが直面していたかもしれないことだ、とも。(「噛みきれない想い」角川学芸出版)。

 沖西慶子さんらの伝承活動も、被爆体験を私たちみんなが背負うためのものだと感じます。

 2017年、核兵器禁止条約が国連で成立しましたが、唯一の被爆国である日本は、これに署名、批准していません。署名を政府に求める動きがそれほど大きなうねりとなっていない理由は、被爆者の痛みを十分に分かち合ってこなかった私たち自身にあるように思います。