徳島県阿南市出身の漫画家野田彩子さん(32)が、俳優の世界を描いた最新作「ダブル」を、漫画出版社ヒーローズが運営するインターネット漫画サイト「ふらっとヒーローズ」で連載している。演技に対する過剰なまでの情熱と男同士の奇妙な友情、ドラマチックなストーリー展開で話題を集め、徳島ゆかりのキャラクターが多数登場して県内読者は思わずニヤリとさせられる「ダブル」の見どころや古里に対する思いについて、野田さんが語ってくれた。

 

写真を拡大  「ダブル」単行本1巻の表紙

 

 ―「ダブル」はどんな作品か。

 天才役者とその代役という、2人の男の物語です。心からの友達と同じ目標を持って、一緒に好きなものを仕事として選んだ時にどういうことが起きるのか。そういう話を描こうとしています。

 ―役者をテーマに選んだ理由は。

 私自身、観劇が好きで、演劇と劇団に所属する役者さんの生活に興味がありました。自分の体を使って表現する俳優という職業に対する憧れや思い入れについて、自分なりに考えてみたいという思いもありました。

 ―天才役者と代役という人物設定がユニークだ。

 スケジュールなどの都合で本人が稽古に参加できない時に、別の役者が代わりに稽古に出るというお芝居特有の慣行に面白さを感じていたので、主人公2人の関係性をより強固にするために設定に取り入れました。

 ―各話のタイトルが有名な演劇作品から取られていて、内容もリンクしている。

 タイトルは演劇に詳しい担当編集者さんが考えてくれています。知っているタイトルが出てきたり、知らない戯曲に触れるきっかけになったりして、読者に楽しんでいただければうれしいです。

 ―「宝田」「多家良」「鴨島」など、登場人物の名前に徳島の地名が多く使われている。

 古里・徳島のことをアピールしたいのと、キャラクターを名付けるのがかなり苦手なので、名字を徳島の地名から頂いて、下の名前は子供の名付けサイトで画数の良いものを付けるという手段をよく取っています。

 ―漫画家の山上たつひこさん、俳優の故大杉漣さんら、徳島出身の著名人がモデルの人物も出てくる。

 「もしかしたらキャラクターにモデルがいるのかも」と思いながら読んでいただければいいなと思ったのと、地名以外からも名付けることを模索する中で生まれました。

 大杉さんは、漫画内に出てくるドラマのような、予算の少ない作品にも積極的に出られていたという記事を読んだことがあって、私が好きな津田寛治さんがとても尊敬されていることも影響しました。

 

写真を拡大 「ダブル」の一場面(©野田彩子/ヒーローズ)
 「ダブル」あらすじ 天才的な役者でありながら演技以外は天才的に下手な宝田多家良と、その才能にほれ込んで彼を献身的に支える役者仲間の鴨島友仁。まだ無名の2人が「世界一の役者」を目指して芸能界に旋風を巻き起こしていく。

 

 ―執筆で苦労している点や楽しい点は。

 実はそれほど演劇に詳しくないので、執筆の合間に取材したり資料集めをしたりしています。登場人物の顔を毎回頑張って描いていて、めちゃめちゃ時間がかかるのですが、一番楽しいですね。キャラクターの顔の造形や表情を楽しんでいただけるとうれしいです。

 ―漫画家を志したきっかけは。

 小学生の頃、姉がノートに漫画を描いていたのをまねして描き始めたのがきっかけで、「漫画家になりたい」という夢を持つようになりました。中学生の時には集英社の「別冊マーガレット」に投稿していました。

 ―影響を受けた作家さんや作品は。

 いくえみ綾さん、松本次郎さん、五十嵐大介さん、松本大洋さん、岡崎京子さん、コージィ城倉さん、かわぐちかいじさん、今敏さん、原田眞人さん、「映画クレヨンしんちゃん」など、好きな作品や作家さん全てから影響を受けています。

 ―その後、どうやってプロになったのか。

 同人誌作りとアルバイト以外何もしていない時期があって「このままではまずい」と思って同人誌即売会「コミティア」に出すつもりで描いた作品を小学館の「IKKI」に持ち込んだところ、新人賞に当たる「イキマン」を受賞してプロデビューしました。

 ―「新井煮干し子(あらい・にぼしこ)」名義で描いている男性同士の恋愛を描いたボーイズラブ(BL)作品でも高い人気を誇っている。

 「IKKI」でデビューした後、次作の準備中に作った同人誌を読んだ茜新社のBL漫画誌「OPERA」の編集者の方からお声掛けいただいて連載デビューしました。ですからデビューは一般誌が先、連載はBL誌が先となっています。

 

写真を拡大   野田彩子さん自画像
 のだ・あやこ 1987年7月25日生まれ。阿南市出身。2011年4月、「鮫島さん」で小学館「IKKI」の「第49回イキマン」を受賞してプロデビュー。著書に「潜熱」「わたしの宇宙」(小学館)、新井煮干し子名義で「ふしぎなともだち」「もらってください」(茜新社)など。1月からヒーローズ「ふらっとヒーローズ」で「ダブル」を連載。現在、単行本1巻が発売中。

 

 ―BL作品と一般作品はどのように描き分けているのか。

 テーマというか、内容は作品によって違いますので「BLと一般作品」として分けることはできません。作画の面で多少変化を付けようとしていたことはありますが、今はあまり気にしていません。

 ―徳島での生活が作品に反映されている部分はあるか。

 「わたしの宇宙」「ふしぎなともだち(BL)」には徳島での描写や徳島出身のキャラクターが登場します。あとは、どの作品でも登場人物の名字に徳島の地名や特産品を使うことが多いです。

 ―徳島の好きな場所や食べ物は。

 大野海苔が大好きです。東京にいるとなかなか食べられなくて悲しいですね…。

 ―今後の目標は。

 今は頑張って「ダブル」をたくさんの人に読まれる漫画にしたいです。いろいろな作品を描いてきた中で「より多くの人に読んでもらいたい」という思いが強くなり、エンターテインメント性やキャラクターの表情、画面の華やかさなどを今までよりも意識して描いています。

 そこからどう評価されるのかは分かりませんが、結果として今後「『ダブル』の野田彩子」と呼ばれるような私の代表作になれば面白いと思いますし、次の作品を描いた時にはそちらが新たな代表作になるような仕事をしていきたいです。

 ―徳島の読者へメッセージを。

 主人公は宝田多家良(たからだ・たから)と鴨島友仁(かもしま・ゆうじん)、どちらも徳島の地名を頂いています(鴨島は「かもしま」と読むのですが…。)。ご興味ありましたら「ふらっとヒーローズ」で1~5話と最新話を無料公開中です。どうぞよろしくお願いいたします。