南海トラフ巨大地震などの災害に備え、国土交通省が阿南市豊益町の桑野川河口で行っていた陸こう全7基の整備が完了した。津波や高潮が発生した際、浮力により自動で閉鎖する仕組み。同省那賀川河川事務所(同市)によると、うち今月完成した1基は幅20メートル、高さ3メートルと、電力も人力も必要としない無動力の陸こうとしては日本最大級となる。
陸こうは、7基とも王子製紙富岡工場岸壁前の海抜2・1メートル地点に設置された。幅12~20メートル、高さはいずれも3メートルのステンレス製。中に発泡ポリウレタンが入っている。
平時は倒れていて資材運搬のための通路となる。水かさが増えるにつれて70度まで自然に起き上がり、県の想定で約4メートルとされる津波高を上回る高さとなって、周辺の工場や住宅地の浸水を防ぐ。自動式のため、陸こうを閉めに行った人が被災する危険がなくなる。
2007年に国と県が策定した「那賀川水系河川整備計画」に基づく地震・津波対策事業の一環として、国交省が14年度から順次整備していた。事業費は約11億円。
27日、現地で見学会が行われた。国交省や市の職員ら約50人が参加し、点検用の補助動力を使って約20分かけて陸こうを閉めた。