渡邉健太さん(33)=上板町瀬部=

 「自分が作った色が100年後も200年後も残ってほしい。そんな思いで藍染をしている」。渡邉健太さん(33)=上板町瀬部=が笑顔で語った。

 「BUAISOU」を離れ、2018年4月に独立し藍染工房「Watanabes(ワタナベズ)」を立ち上げた。今年2月には施設も完成。100年後も残る色の実現を目指して、今年から本格的に動き出した。

 藍の栽培から蒅(すくも)作り、藍染製品の製造販売まで全てこなすのが渡邉さんのこだわり。良い色を追求したいという願いがそうさせた。良い葉藍を育てれば良い蒅ができる。良い染料ができれば良い色が出せるからだ。

 藍の栽培や蒅作りのノウハウは2012~15年の上板町地域おこし協力隊時代に、町内の藍師新居俊二さんから教わった。

藍の葉を前に笑顔を見せる渡邉健太さん

 約6年のキャリアで分かったことがある。良い藍を育てようと思ったら、まず良い土を作ることから始めなければいけないということ。親しくなった近くの養豚業者から堆肥をもらい土作りをしたところ、良い藍が育つことを実感している。地域資源を有効利用でき、一石二鳥だった。

 地下水も豊富だ。吉野川の水脈から取った井戸水は、冬温かく、夏は冷たい。藍染にはたくさんの水を必要とするため「こんなに恵まれた環境はない」と大満足している。

 山形県出身。山形大を卒業後、東京都内で会社員をしている時に、藍染を体験。天然藍の生み出す色の素晴らしさに感動した。

 藍染がしたい。どうせなら藍を育て、蒅作りもしたい。そんな思いが募った。転職を考え、来る日も来る日もインターネットで求職情報を探していたところ、幸運にも上板町が地域おこし協力隊を募集し始めたため、迷わず応募した。

 6月末、取材に訪れた日には、60㌃の畑で藍がすくすくと育っていた。25俵の蒅の製造を目指す。元気な葉を眺めて、渡邉さんも上機嫌だ。

店頭やネットで販売される藍染服

 「ワタナベズでは、地域への恩返しをしたいと考えている」。渡邉さんは力を込める。畑や道具を探してくれたり、藍染がしたいという観光客を工房へ連れてきてくれたり、多くの人々に支えられて、藍に携わる仕事ができるようになった。

 「ナベちゃん」と慕われ、近所の人や下校中の小学生が工房に立ち寄ることも珍しくない。「テーマは『人』。地域とのつながりを大切にしながら藍染を続けたい」と白い歯を見せた。