道案内したお礼に外国人からもらった鉛筆削り

 夜8時頃だったと思う。仕事を終え、福島方面を歩いて帰っていたところ、「ストップ」「ストップ」と声を掛けられた。外国人2人だった。英語で話し掛けてくるので、「日本語は話せますか」と片言の英語で問い掛けると、「ノー」と言われた。正直、困った。私はほとんど英語が話せない。大学卒業後、英語に触れ合った機会もないぐらいだ。

 何となくやりとりを繰り返すと、道に迷っていたようで、徳島大学に行きたい、ということが分かった。ただ、徳島大学までの道のりをどう説明していいか分からない。ストレート、ライト、レフト…。単語は出ても、何番目の交差点をどうだとか、順序だって説明できるほどの語学力はない。結局、出た言葉は「トゥギャザー レッツゴー」。一緒に歩いて行くことにした。

 片言の英語でやりとりしながら、インドから来ていたことや、眉山のロープウエーに行った後に迷ったことなどが、何となく分かった。ただ、いろいろ話した掛けたものの、相手はぽかーんとして通じない。逆に向こうから話し掛けられても、こちらが答えられない。微妙な空気が漂いながらも、ひたすら歩き続けた。その途中に、何度も繰り返して言っていたことがある。正確には訳せないが、「この後、引き返すのに大丈夫なのか」といったニュアンスだったように思う。私は「ノープロブレム」と言いながら、とにかく徳島大学まで案内することに必死だった。

 到着した後、お礼を差し出された。筆箱の中に入っていた、小さな鉛筆削りだった。持っているものの中から、とっさに取りだしてくれたのだろう。気持ちがうれしかった。

 送り終えた後、歩んだ道を戻った。無事に送り続けたことへの安堵の一方で、英語が話せなかったもどかしさと悔しさ、きちんと会話ができなかったことに対する相手への申し訳なさがこみ上げて、複雑な思いだった。うまく言い表せないが、自分のふがいなさと、心の温かさを感じる不思議な出会いだった。(卓)