阿波橘海産with海鮮カフェの「ハモかつ丼」。「あなんハモ丼」として売り出している
阿南市の椿泊漁協で水揚げされるハモ=7月23日午前5時

 ハモのおいしい季節がやってきた。ハモは関西で「ハミ」とも呼ばれることから、8月3日は「ハモの日」とされる。この時期、夏を代表する魚として京都や大阪で好んで食べられるハモだが、供給元は全国有数の漁獲量を誇る徳島県だ。近年、県などは「ハモの産地・徳島」を売り出そうとPRに取り組んできた。その一環として2011年に阿南市で生まれた「あなんハモ丼」は、地産地消のご当地丼として市内数店舗で提供されている。

 夜明け前の午前5時、阿南市の椿泊漁港に紀伊水道から底引き網漁船で運ばれた大量のハモが次々と水揚げされた。鋭い歯をのぞかせながら細長い魚体をくねらせ、生命力にあふれている。

 椿泊漁協のハモは7月から8月にかけてが出荷の最盛期で、漁獲量は県内でもトップクラス。しかし、大半が消費地の関西方面へ出荷されるため、市内ではハモを食べられる飲食店が少なかった。

 「高級魚というイメージを変え、阿南で気軽にハモを食べてもらいたい」。11年秋、食による地域活性化策を探っていた阿南商工会議所青年部は、ご当地丼の考案に乗り出した。

 当初は「あなん丼」の名称で、市内飲食店から試作丼を募った。レシピは自由で、見た目も味付けもバラエティーに富む。青年部が認定会を開き、1年目は7店舗でハモの丼を売り出した。

 その後、ガイドブックの発行や、ハモのキャラクター「ハモーン」を作ってPR。ハモを食材に使っていることが分かるように、名称を「あなんハモ丼」に変え、丼を扱う店は最大17店舗まで増えた。

 ところが、徳島で大量消費されることが少ないハモは、店にとっても需給を調整するのが難しく、次第に提供店が減少。阿南商工会議所の羽田慎也経営指導員は「現在、メニューに出している4店舗と、それ以外に予約対応できる店を紹介している」という。

 そんな中、「阿波橘海産with海鮮カフェ」(阿南市橘町豊浜)は、「あなんハモ丼」の店として県外客からも人気を集めている。

 ハモの丼は「天丼」が一般的だが、同店で出しているのは「カツ丼」。阿部睦子店長は「漁師の家で育った子どもの頃からハモは身近な食材で、カツにして食べていた。その影響で自然とカツ丼になった」と話す。

 肉厚のハモを使い、骨切り処理をした上で短時間でからりと揚げる。地元の漁師から仕入れているため、新鮮そのもの。さくさくとした食感の後にハモの甘みが口に広がる。

 「ハモの骨はみそ汁のだしに使えばおいしいし、無駄な部分がない。これからも料理を通してハモの魅力を伝えたい」と阿部店長。

 8年前、「ハモを阿南の特産品に」と始めたご当地丼の取り組みは、規模を縮小しながらも、地域の店舗がその思いをしっかりと引き継いでいる。 

 ハモ 本州中部以南の沿岸などに生息し、体長は0・6~2メートル。ウナギのように細長く、鋭い歯を持つ。ハモ漁は底引き網が中心で、需要の多い夏場を中心に5~9月に最盛期を迎える。徳島県水産振興課によると、2018年の県内年間漁獲量は433トン。同年の県産ハモ取扱量は、大阪市中央卸売市場で148トン(産地別では徳島県は1位)、京都市中央卸売市場で95トン(同3位)と上位を占める。県内では椿泊漁協のほか、徳島市、小松島両漁協でもハモ漁が盛んに行われている。

 「阿波橘海産with海鮮カフェ」では、みそ汁、漬け物付きの「ハモかつ丼A」が750円(税込み)。「ハモしゃぶランチ」(1980円、要予約)や、単品の「ハモかつ」(3個入り、600円)などもある。阿南商工会議所によると、「かもだカフェ」(阿南市椿町船瀬)、「那賀乃坊」(同市羽ノ浦町中庄)、「ます膳」(同市那賀川町芳崎)で「あなんハモ丼」を注文できる。問い合わせは商議所<電0884(22)2301>。