岡本神草「傘の舞妓」(1922年、絹本着色、培広庵コレクション)

 和傘を差して、花かんざしに赤い襟の着物が初々しい舞妓さん。かつて浮世絵では、花街の女性たちが数多くモデルとなっていたが、大正、昭和の「美人画」にも舞妓さんや芸妓さんが数多く登場する。

 それらには共通する特徴がみられる。切れ長でつり気味の細い目。目と眉の間は離れていて、色白。細面で面長。口は小さく、ややわし鼻気味で高い鼻。これらは浮世絵以来の美人の典型的な顔の型ともいえるだろう。

 しかし、「傘の舞妓」は一通りの美人の型を踏まえてはいるものの、もっとナチュラルなかわいらしさが目立つ。表情もなにやら無邪気で楽しそうだ。理想化された美人というよりも、身近にいる愛らしい少女といった印象である。

 「美人画」の最盛期となった大正から昭和初期は、同時に画家の個性的な表現が目立つようになった時期でもある。それは大正デカダンス(退廃的、耽美的)といわれ、岡本神草もそれを担った一人だった。

 この作品は、退廃的とまでは呼べないかもしれないが、典型的な美人の型をはみだして、生身の舞妓の姿が人間味のある姿で描かれており、美の基準の多様性を感じさせてくれる。(県立近代美術館学芸員・友井伸一)

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 企画展「美人画の雪月花―四季とくらし」は9月1日まで。和装(着物、浴衣、阿波踊り衣装)で訪れると前売り料金で入館できる。

「美人画の雪月花-四季とくらし 培広庵コレクションを中心に」展