第9回社会医療法人川島会川島病院市民公開講座「のばそう健康寿命」(主催:川島病院、徳島新聞社)が7月7日、徳島市のJRホテルクレメント徳島で開かれた。東京女子医科大学の新田孝作教授が「もっと腎臓病を知ろう」をテーマに特別講演。慢性腎臓病の基礎知識や、他の腎臓病について解説した。川島病院泌尿器科部長の西谷真明氏は前立腺の病気について、川島病院泌尿器科医師の伊藤文子氏は女性のおしっこの悩みについて、徳島文理大学保健福祉学部の鶯春夫教授は、認知機能改善と口腔機能改善をテーマに「いきいき百歳体操」を披露した。   

登壇者:◇開会あいさつ・川島 周氏(川島ホスピタルグループ会長)◇座長あいさつ・水口 潤氏(社会医療法人川島会理事長)◇特別講演:新田 孝作氏(東京女子医科大学腎臓内科学教授)◇講演:西谷 真明氏(川島病院泌尿器科部長)◇伊藤 文子氏(川島病院泌尿器科医員)◇鶯 春夫氏(徳島文理大学保健福祉学部理学療法学科教授)

                          

 

開会あいさつ川島周 氏 

市民公開講座も、今年で9回目となりました。診療に携わるわれわれ臨床医は、普段から「患者さんとの対話」を大切にしています。そして、円滑な治療を進めるためには、病気や治療に対してお互いが共通の知識を持つことが必要だと考えております。今回は東京女子医科大学の新田孝作教授にお越しいただき、腎臓病と最先端の治療法についてご講演をいただきます。続いて、当院医師が前立腺、女性のおしっこの病気についてお話しさせていただきます。最後に、鶯春夫先生に健康寿命を延ばす体操をご紹介いただきますので、楽しんで聞いてください。

 

 

 

座長あいさつ 水口潤 氏

 今回の市民公開講座のメインテーマは「腎臓、泌尿器科の疾患」。日本の慢性腎臓病(CKD)患者は、全国に約1,300万人いると言われています。腎機能が低下すると、脳卒中や心臓病のリスクが高くなります。腎臓病は病状が進行すると血液透析や腎移植が必要になるので、検査による早期発見、早期治療がとても重要です。本日は、最先端の治療方法を、新田先生にわかりやすくご解説いただきます。また、高齢者に多い前立腺や膀胱の病気についても理解を深めていただき、皆さまの毎日の健康管理に役立てていただければ幸いです。

 

 

「もっと腎臓病を知ろう」新田孝作 氏

 

 腎臓は約10㌢程度の大きさで、腰の少し上の背中側に二つあります。血液から不要な物質(老廃物・余剰水分など)を除去し、尿として体外に排せつする役割を担っているのです。体に必要なホルモンを作り出し、ミネラル(電解質)や、酸性・アルカリ性のバランスを調整して体内環境を一定に保つ働きもしています。また、腎臓の内部にある「糸球体」という組織は、フィルターのような働きをして血液のろ過を行っています。

 IgA腎症は、異常なIgA(免疫グロブリンA)が糸球体に沈着して腎臓に炎症が生じる病気で、放置しておけば数年単位でゆっくりと進行し、やがて腎不全につながる恐れがあります。初期は無症状、検診で尿所見異常(タンパク尿・顕微鏡的血尿)が見つかる場合が多く、確定診断には腎生検が必要となります。治療法は、炎症が強い時は「扁摘パルス療法」、慢性所見には「降圧薬(レニンアンジオテンシン系阻害薬)」が有効です。早期発見・早期治療をすれば、将来的に透析治療にならずに済む時代なので、気になる方は早めに受診をしてほしい。

 ネフローゼ症候群では、大量のタンパク尿により、低アルブミン血症を来たし、まぶたや膝下に浮腫(むくみ)の症状が現れます。進行すると、高脂血症や血栓症などさまざまな病気を合併する恐れがあります。病院ではまず尿検査と血液検査を行い、タンパク尿と低アルブミン血症の数値を調べます。異常があれば、腎生検による病理診断により、確定診断となります。副腎皮質ホルモンを使用して行う治療法は免疫を抑え、炎症を鎮める効果があるが、副作用も多いため、感染症や糖尿病への注意が必要。患者さんの中には、ステロイドが効かない人、再発を繰り返して内服をやめられない方もおられます。しかし、最近、頻回再発型微小変化型ネフレーゼ症候群患者に「リツキシマブ」が有効だということがわかってきました。この薬は、6カ月ごとに投与するだけで、副作用もほとんどみられません。また、保険適用されているので、費用の負担も軽くなります。ステロイドを飲み続けることがつらい患者さんにとって、これは革命的な薬と言えます。主治医と相談しながら治療に臨んでいただきたい。

 多発性嚢胞(のうほう)腎は、腎臓に嚢胞(分泌物が入った袋)が多発し、進行すると腎機能が低下する病気で、遺伝性があります。A子さん(40歳・女性)の例を紹介します。人間ドックで高血圧と腎臓に嚢胞が見つかったA子さん。実のお母さまが嚢胞腎で透析されていたので、念のためエコー検査を行うと、「遺伝性の多発性嚢胞腎」と診断されました。この病気は、脳動脈瘤(りゅう)などの合併症や、くも膜下出血につながる恐れがあります。治療は、1日2㍑の水と降圧薬を飲んでもらいながら経過観察をしたのですが、効果が見られなかったため、トルバプタンという薬による入院治療を行いました。その後、A子さんは難病申請を行い、月に1度の通院を続けながら、投薬治療を続けておられます。遺伝性については、A子さんの子供たちのうち、誰に遺伝するかはわかりません。現在は治療薬も出ているので、子供たちが30歳になるまでにスクリーニング検査を受け、早期治療を受けるよう勧めています。

 次は、腎不全治療から透析・移植までについてお話しします。慢性腎臓病(CKD)はできるだけ早い段階で治療介入することで、透析導入を回避できる。食事や血圧管理など、ご自身での生活習慣の改善も大切です。しかし、病気の進行や、他のさまざまな原因で腎臓の機能が十分でなくなると、腎代替療法が必要となります。この療法は、腎臓の機能が10%以下、腎不全による症状が内服薬でも回復しない状態、腎臓の機能だけでなく、症状も含めた総合判断が必要とされます。「血液透析」は、血液を機械でキレイにする療法で、1回4~5時間、週3回通院してもらう必要があります。「腹膜透析」は、在宅で透析ができる療法で、ご自身の腹膜を利用して血液をキレイにします。腹膜透析を日中に行う場合は、1日4回の透析液交換が必要となります。夜間に行う場合は就寝中に機械が自動的に透析液を出し入れします。通院は月に1~2回程度で済む。腎移植は、ドナー(臓器提供者)の腎臓を腎不全の患者さんに移植し、腎臓の機能を働かせる治療法である。透析からは解放されるが、免疫抑制薬をずっと飲み続ける必要があります。

 最後に、CKD患者さんの高齢化に伴い、フレイル予防と対策が重要になっています。それぞれの病状に合わせながら、食事管理と薬物療法に加え、散歩などの有酸素運動や軽い筋力運動を日常生活に取り入れ、これからも元気に長生きしてほしい。