徳島大は4月、学内の研究・教育成果を活用し、企業との共同研究や新産業の創出を図る「産業院」を開設する。これまで個々の教員が中心になって担ってきた産学連携に、組織的に取り組む。大学の財政状況が厳しさを増す中、地域課題などを解決することで、運営・研究資金獲得につなげる狙いがある。

 産業院には、研究開発事業と企画戦略の2部門を設ける。その上で▽企業との共同研究開発や収益を伴う事業の実施▽事業化・産業化に向けた課題解決▽新規産業の創出を図る事業の企画立案▽研究者や経営者の育成と学生の教育―などを行う。

 研究開発事業部門は産学連携による資金獲得の実績、またはその見込みがある教員を5人程度選出。産業院専属のコーディネーターと連携し、企業との共同研究に取り組んでもらう。

 企業の研究者、技術者らが新規事業の基礎研究や製品開発をするための研究室を設置し、非常勤の大学教員として招聘(しょうへい)する。学生への講義や指導が可能になるとともに、学内の教育研究施設や設備を職員同様に使用できるメリットがある。

 企画戦略部門は、徳島大の研究支援・産官学連携センターが担う。企業からの要望などを基に、大学が保有する知的財産や設備を生かした企画立案と、研究開発の事業化・産業化を支援する。

 徳島大によると、既に食品やIT、機械分野の企業と交渉を進めている。産業院での取り組みの成果として、事業収益をはじめ、企業から特許料や株の配当などを受け取ることで、学外からの資金獲得も目指す。

 こうした収益の一部を学内の基礎研究分野に回し、徳島大全体の研究レベルの底上げも図る。学生にも参画を促し、企業との共同研究やインターンシップの充実などを通じて、雇用創出の場としての役割も果たす考えだ。

 国立大への運営費交付金は減額が続き、徳島大は17年度で127億円。13年前(04年度)から約30億円減少し、財政は厳しさを増している。野地澄晴学長が「大学の教育・研究力を維持・向上させていくには、地域課題などを解決することで資金獲得の道を探らなければならない」と発案。産業院の設置を決めた。

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 19日午後3時半から同大常三島キャンパスで「産官学連携セミナー」を開き、産業院の概要などを説明する。参加無料。問い合わせは同大研究支援・産官学連携センター<電088(656)7592>。