新幹線は多くの人命を乗せて走る。何より優先されるのは安全運行だが、昨年12月、JR西日本の、のぞみの台車に破断寸前の亀裂が見つかったことで、それは大きく揺らいだ。
台車を製造した川崎重工業が明らかにしたのは、作業時のマニュアルに反し、台車枠の鋼材を薄く削っていたことだった。問題の亀裂は、底面の溶接不備が発端となって生じ、周辺の鋼材が薄く強度が不足したことから広がったという。
作業の手順や確認、検査はどうだったのか。新幹線の安全神話の上にあぐらをかいていたのではないか。原因を究明するとともに、製造体制を厳しく見直さなければならない。
川重とJR西によると、台車枠は加工後、鋼材の厚さが7ミリ以上あることが求められていたが、驚いたことに、底面の亀裂部分を調べたところ、最も薄い箇所で4・7ミリしかなかった。
メーカーに求められるのは、製品の安全性であり、高い品質のはずだ。しかし、現場の隅々まで浸透していたのだろうか。
製造時の注意事項などを記した「作業指導票」は台車枠の表面を削ることを禁じていた。作業責任者が、その内容を十分理解していなかったという。
疑問なのは、削り込まれた鋼材を再確認しなかった点だ。鉄道各社も、メーカーから納入された台車を改めて検査することはほとんどない。
昨秋以降、ものづくり企業で不正が相次いで発覚した。産業界は、いま一度、安全や品質への意識を徹底する必要がある。