貿易戦争を引き起こしたいのだろうか。その姿勢に、あぜんとさせられる。
トランプ米大統領が、鉄鋼とアルミニウムの輸入増が安全保障上の脅威となっているとして、輸入制限を発動する方針を表明した。発動されれば、リビア産原油の輸入を禁じた1982年以来のことだ。
これに対して、米国への輸出が多い国・地域が一斉に反発したのは当然である。保護主義を強めれば、どんな禍根を残すのか。トランプ氏は、国内外の声をしっかりと聞くべきだ。
主な標的とされる中国の鉄鋼工業協会は「愚かな貿易保護措置だ」と批判した。日本製品も含まれる可能性があり、世耕弘成経済産業相は「同盟国である日本からの輸入が米国の安全保障に影響することは全くないと考えている」と述べた。
欧州連合(EU)は報復措置に出る構えで、米経済にとってもプラスばかりではあるまい。
発動方針は、近く正式決定されるというが、このままでは世界経済の混乱は避けられない。きのうの東京株式市場の日経平均株価の下げ幅は、一時600円を超えた。中国をはじめとする生産国との通商摩擦が激化すると警戒されたためである。
米商務省は大量輸入を放置すれば、米メーカーの生産力が奪われ、国防産業に影響を与えかねないと判断し、トランプ氏に輸入制限を勧告していた。
トランプ氏は11月の中間選挙に向け、国内製造業の再生に取り組んでいるのをアピールしたいのだろう。だが、あまりに身勝手と言わざるを得ない。