徳島県内8市の当初予算案が出そろった。

 人口が減り、税収も伸び悩む中、各市は住民生活の向上に知恵を絞ったのだろう。防災や子育てなど、関心が高い分野に重点配分しようと工夫を凝らした跡はうかがえる。

 しかし、全体を見渡すと、人口減少社会に対応した予算編成ができているのか、懸念は拭えない。

 まず気になるのは、予算規模の拡大だ。一般会計の総額は8市のうち7市で前年度を上回った。徳島市と吉野川市は過去最大、鳴門市と小松島市は過去2番目となった。

 人件費、扶助費、公債費を合わせた義務的経費については、社会福祉関連費用の増大に頭を悩ませながらも、職員数削減などで抑制に努めているようだ。一方、普通建設事業費を中心とした投資的経費の増加が予算規模の拡大につながっている市が目立つ。

 各市の投資的経費をみると、吉野川市は旧麻植協同病院跡地にアリーナ(屋内競技場)・交流センターを設ける事業などで15・8%増。三好市は船井電機池田工場跡地の公園整備や新庁舎関連事業などで8・0%増とした。鳴門市は前年度の抑制基調から一転し、45・3%増となった。

 市によっては、市債残高が過去最大となったり、当初予算総額を上回る規模に膨らんだりしている。大盤振る舞いを続けていると、財政の逼迫(ひっぱく)を招きかねない。

 財政規律を軽視してはならない。必要性を厳しく吟味する姿勢が求められる。

 ただし、何でも削減すればいいというのではない。防災対策など市民の命に関わるような事業には臆せず取り組むべきであり、少額でも必要とされる事業はある。暮らしを後押しする施策は積極的に推進してもらいたい。

 例えば、阿波市は県内で初めて「不育症」の治療費を助成する事業を盛り込んだ。総額は45万円ながら、支援を必要とする市民には大きな意味を持つ。阿南市による骨髄移植の提供者(ドナー)支援事業(15万円)もその一つだ。

 懸念されるのは、事業費を補う基金の残高が減っている市があることだ。

 徳島市は昨年12月、このままでは財政調整、減債両基金が21年度にも枯渇する見通しだと明らかにした。だが、基金に頼って窮状をしのいできたのは徳島市に限らない。慎重な運用が必要だ。

 8市のうち「平成の合併」を経た5市は、地方交付税が特例で加算される優遇措置を受けてきたが、既に段階的な削減が行われている。交付税の算定方法見直しで削減幅は小さくなったとはいえ、楽観は許されない。

 8市を含むほとんどの地域は、深刻な人口減少への有力な対策を見いだせていない。景気の先行きは不透明で、税収が伸び悩む傾向は今後も変わらないだろう。「何を諦めるか」を市民に丁寧に説明しながら、財政健全化に向けた見直しを行うよう求めたい。