学校法人「森友学園」への国有地売却を巡って、財務省が決裁文書を書き換えた疑いが浮上した。朝日新聞が報道したもので、国会は紛糾している。
国と森友側は2016年6月20日付で、小学校の建設が計画されていた大阪府内の国有地を、約8億円値引きして売買する契約を締結した。
昨年2月に問題が発覚した後、国会議員に決裁文書を開示し、交渉経緯の書面も添付されている。
報道では、森友側との交渉を担った財務省近畿財務局が作成した決裁文書に関して、契約当時の文書と、開示した文書の内容に違いがあると指摘している。「特例」などの文言が複数箇所でなくなっているとも報じた。
事実であれば、行政の信頼は地に落ちる。国会や政府は徹底的に調査し、真相を解明しなければならない。
野党は「文書は書き換えられた疑いが濃厚」とみて安倍政権の責任を追及し、決裁文書の原本を提示するよう要求した。
だが、財務省の対応はすっきりとしない。
財務省担当者は参院予算委理事会で、文書の原本は大阪地検に提出しており「近畿財務局にはない」と説明した。提出したのは森友学園に国有地を売却した契約と、それに先立つ貸し付け契約に関する決裁文書の原本だという。
担当者は「捜査の対象となっており、全ての文書を直ちに確認できない状況だ」とも述べた。
大阪地検特捜部は近畿財務局長らの背任容疑や、保存義務のある交渉記録を廃棄したとする公用文書毀棄(きき)容疑で捜査中だ。
もちろん財務省は捜査に全面協力しなければならない。しかし、並行して文書を調査し、国会に報告するのにどんな不都合があるのか。捜査を理由に、確認を避けているとみられても仕方があるまい。
そもそも、森友学園を巡る財務省の説明は、不可解な点が多すぎる。
佐川宣寿国税庁長官は理財局長時代に、国会で「面会の記録は、事案が終了し、廃棄した」「価格を提示したことも、いくらで買いたいとの希望があったこともない」などと答弁し、国有地売却の適正さを強調していた。
ところが、特別国会では、特例を重ねた異例の対応の一端を示す音声データの存在が判明した。
今年1月にも、近畿財務局が「売買金額は、できる限り事前調整に努める」との方針を記した内部文書の存在が明らかになっている。
財務省はその都度、釈明してきたが、それで済むものではない。
これまで、安倍晋三首相は国有地売却について、自身や昭恵夫人の関与は一切なく、行政による忖度(そんたく)もなかったと述べてきた。
安倍首相は「丁寧に説明する」という言葉通り、積極的に調査してもらいたい。