これまでの説明は何だったのか。麻生太郎副総理兼財務相のみならず、安倍晋三首相の責任も問われよう。
学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、財務省は決裁文書の書き換えを認める方針を固めた。契約の「特殊性」といった当初の記述を削除した例が複数判明したとの調査結果をまとめ、きょう国会に報告する。
肝心なのは、いつ誰が、何の目的で文言を削除したか、である。とりわけ、なぜ書き換えたのかが、はっきりしないと、1年余りもくすぶり続けている森友問題の出口は見えてこない。
公文書を都合よく改ざんするなど、民主主義国家ではあってはならないことだ。財務省は、包み隠さず真実を明らかにしなければならない。
書き換え疑惑は、朝日新聞の報道で浮上した。それによると、契約時の書類には「価格提示を行う」などの表現があったが、昨年2月の問題発覚後、国会議員に開示された文書からは消えていた。「特例的」との文言を含む、貸し付け経緯を記した1ページ余りの記載は、項目ごとなくなっていたという。
「由々しき事態」(麻生氏)にもかかわらず、財務省は解明に及び腰で、与党幹部の求めでようやく出した文書は、先の開示文書と同じ内容だった。改ざんを知りつつ提出したのなら、国会をないがしろにしていると言わざるを得ない。
今月9日には、森友学園との事前の価格交渉を否定し、記録は破棄した、と説明してきた佐川宣寿国税庁長官が辞任した。理財局長時代の答弁が「虚偽だ」と指摘され、書き換え疑惑でも国会審議を混乱させたとし、責任を取った。徴税部門トップが確定申告期間中に交代するのは異例で、事実上の更迭とされる。
問題との関連は不明だが、学園と交渉した近畿財務局の担当部署職員の死亡も判明した。自殺とみられる。
財務省は、書き換えに関与した近畿財務局の担当職員や本省幹部らの懲戒処分を今後検討するようだが、佐川氏の辞任や職員の処分で幕引きとはいくまい。「適材適所だ」と佐川氏をかばい、野党の追及をかわしてきた政権の責任は重い。
そもそもの始まりは、安倍昭恵首相夫人が名誉校長に一時就任した学校建設のため、約8億円もの値引きをして国有地を売却したことだ。
不当な便宜供与はなく、価格も適正というなら、なぜ罪に問われかねない公文書の書き換えに手を染めたのか。「行き過ぎた忖度(そんたく)」(同省関係者)を隠そうとしたのではないか。安倍1強体制のひずみが、ここにも現れているとの見方もできよう。
いずれにしても、改ざんの理由について納得のいく説明ができなければ、国民の政治不信は深まるばかりだ。与党が拒否してきた佐川氏や首相夫人の証人喚問も、もはや避けては通れない。