議員の「なり手不足」の解消が一つの目的だというが、すっきりしない。自分たちの報酬を月額で3万円アップすることを議決した東みよし町議会のことである。
改定によって、4月からの議員の報酬は現在の月19万5千円から22万5千円に引き上げられ、藍住町(22万2千円)などを抜いて県内の町村で最高水準となる。
議員のなり手不足の解消は、東みよし町に限らず、全国的なテーマである。村議選の定数割れを懸念した高知県大川村が昨年、議会を廃止して「総会」を設置することを検討すると打ち出し、一石を投じたのは記憶に新しい。
人材が議会に集まらなくなると、行政を監視する機能が弱まり、有権者にしわ寄せがいく。議員の仕事の魅力を高め、多種多様な人が議員を目指せる環境を整えることが必要との意見に異論はない。
問題は手法だ。まず、報酬を引き上げるだけで人材が集まるのかという疑問がある。
月額20万円前後の報酬では、生活のために他に仕事を持たなくてはならず、議員の仕事に思うように打ち込めない、との見方はあるだろう。子育てに十分な額ではないため、若手が参画しようにもできない、という声もある。
しかし、3万円上げたところで事情は大きく変わらず、有効な対策とは思いにくい。一方、現在の状況で報酬を一気に引き上げ、フルタイムの労働者と同等にするべきだと考える有権者は少ない。
県内では一昨年から昨年にかけ、北島、那賀両町議会で報酬増が議論された。いずれも実現しなかった背景には、有権者の理解が得られにくいという判断があったようだ。
では、東みよし町が住民の理解を得られるような論議を重ねたかというと、これも疑問である。報酬増を巡る9日の採決では賛否の討論もなく、なり手不足解消につながるかを綿密に検討した跡はうかがえない。
夜間議会や休日議会を取り入れるなど、報酬を上げる以外に議会活動を活性化させる方策について、十分に話し合ったとも思えない。
大川村の問題を受けて総務省が設置した有識者研究会は近く、地方議会の新制度を提言する方針だ。具体的には▽兼業・兼職の制限を緩和し、兼業議員を多くする「多数参画型」▽議員数を減らす一方、報酬を専業で生活可能な水準に上げる「集中専門型」―の導入を提案するという。
地方議会が抱える問題への一つの処方箋ともなる意欲的な内容だが、こうした議論は中央任せにするのではなく、地方から問題提起するべきだろう。
今後、他の議会が報酬増を目指すことも考えられるが、大切なのは、有権者の方を向いた丁寧な議論だ。「報酬増ありき」と映れば、なり手不足の解消どころか、逆に有権者の「議会離れ」につながりかねないことを認識しなければならない。
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