成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法と関連法の改正案が閣議決定された。政府は今国会に提出し、2022年4月1日の施行を目指す。
若者の積極的な社会参加を促し、自覚を高めるのが狙いだ。「18歳成人」は世界的な潮流でもある。
成立すれば、明治時代以来続く「大人」の定義を変える改革となる。国民生活に大きな影響を及ぼすだけに、国会はしっかりと審議してもらいたい。
年齢引き下げで懸念されるのは、悪徳商法の被害が18、19歳に広がることである。
民法は、未成年者の契約には親の同意を必要とし、同意がなければ取り消せると規定している。改正後は18、19歳でも、親の同意なくローン契約やクレジットカードの作成などができるようになる。
国民生活センターによると11年度以降、18、19歳から寄せられる相談はそれぞれ年間5千件程度だが、20~22歳では各8千件程度に増え、契約額も高くなっている。20代はマルチ商法に関する相談が目立ち、20歳になった直後に狙われるケースが多いという。
18、19歳を成人とし、未成年者取り消し権がなくなれば、悪徳業者の格好の標的になる恐れがある。
このため政府は今月初め、不安をあおる商法や恋愛感情を利用するデート商法などで結んだ契約を対象に、成人でも取り消せる規定を新たに設ける消費者契約法改正案を国会に提出した。
ただ、取り消せる契約の範囲は限られ、実効性は見通せない。状況に応じて対策を強化するとともに、学校などで若者への消費者教育に一層力を入れる必要がある。
18歳成人の導入議論で賛否が割れた飲酒、喫煙や競馬、競輪など公営ギャンブルを禁止する年齢は、従来の20歳未満を変えないことにした。
若い人ほど酒、たばこによる身体への影響は大きく、ギャンブル依存にも陥りやすい。18歳は高校生が多い事情を考えても、現行を維持するのは当然である。
改正では、女性が結婚できる年齢を16歳から引き上げ、男女とも18歳とする案も盛り込んだ。男女を区別する合理的な理由がなく、16、17歳で結婚する女性も減ったからだ。時代に即した対応といえよう。
検討しなければならないのが、成人式の実施時期である。多くの自治体が毎年開いている1月は大学入試センター試験など、受験と重なる。成人の門出の祝い方をどうするのかが問われそうだ。
少年法の適用年齢については、20歳未満から18歳未満に引き下げるかどうか、法制審議会が議論を続けている。
犯罪抑止のため引き下げるべきだという主張と、18、19歳が更生の機会を奪われ再犯率が高まるとする見方で、意見が分かれている。
少年の立ち直りを主眼とする法の趣旨を踏まえた慎重な検討を求めたい。
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