畑に出て、こうつぶやく。「よう育ったのう」。言葉を掛けると、応えたくなるのか、作物は少なからず育つという
 
 徳島県西部の山間部、斜度が40度にも及ぶ急斜面の畑でも代々、そんな「会話」が繰り返されてきたのかもしれない。代々、それを「聞いてきた」のは畝と畝の間に敷き詰められたカヤだった
 
 400年以上も前から受け継がれてきた、その伝統的な農法に光が当たった。三好、美馬の2市と東みよし、つるぎの2町の「にし阿波の傾斜地農耕システム」が世界農業遺産に認定された
 
 日照量に応じて作物を選び、カヤを土壌流出の防止に役立ててきた。カヤ場と呼ばれる採草地を確保し、秋にはカヤ刈り、「コエグロ」を作る。先人たちの知恵と技術、工夫が今の剣山系の傾斜地に詰まっている
 
 刊行されたばかりの「カヤに恋して」(徳島剣山世界農業遺産支援協議会編)に詳しい。永井英彰会長は言う。剣山系で特徴的なのはカヤだが、そのカヤも「平地の畑でも有益だ。カヤを土の上にのせておく、その繰り返しで早くから家庭菜園に取り組んでいる人もいる」
 徳島市内、軒先にカヤを敷き詰めた「家庭菜園」で採れたての大根をいただいた。決して立派ではないけれど、味わいは豊かだ。聞けば、5坪ほどの菜園で育てている作物に、絶えず言葉を掛けているという。