宇宙の深淵(しんえん)には届きそうもないけれど、一つだけ疑いのない事実を知っている。人は必ず死ぬのである。われもまた、誕生の瞬間から余命を生きている
 
 あすになるか、百年先か。違いは手にする時間だけ。迎える結果は同じとはいえ、その差は天と地ほどある。英国の物理学者スティーブン・ホーキング博士が筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症し、余命2年の宣告を受けたのは1963年、21歳の時
 
 徐々に全身が動かなくなり、声も失う難病である。根本的な治療法はまだ確立されておらず、県内でも75人以上が闘病中だ。患者を襲う絶望感の大きさは、想像をはるかに超える。が、天才学者は宇宙の真理を追って学究生活にいそしんだ
 
 光さえのみこむブラックホールも、いずれエネルギーを失って消えるとする「ブラックホール蒸発」理論を提唱。アインシュタイン以後、最高の理論物理学者といわれ、尊敬を集め続けた
 
 14日、76年の生涯を閉じたホーキング氏の伝記映画「博士と彼女のセオリー」にこんなせりふがある。「いかに不運な人生でもやれることはある。命ある限り、希望はあります」
 
 日本ALS協会相談役の長尾義明さん(70)=板野町=から以前、同じ信念を聞いた。偶然の一致というのでもない。残された時間と真剣に向き合った人が到達する真理なのだろう。