初めての福島公演に向け、練習に励む伊藤さん(中央)らあわ工芸座のメンバー=徳島市内

 徳島市の人形座・あわ工芸座が、4月に福島市で無料の特別公演を開く。福島での公演は初めて。京都大准教授として東京電力福島第1原発事故からの復興を支援する伊藤嘉昭さん(64)=京都府宇治市=が昨夏に座に入ったのがきっかけとなり、企画された。メンバーは「福島の人たちに人形浄瑠璃の魅力を知ってもらい、少しでも癒やしになれば」と練習に励んでいる。

 伊藤さんは京都大化学研究所に所属し、元素分析が専門。原発事故から1カ月後、福島県民の被ばくの有無を確かめるスクリーニング作業に2週間ほど従事した。その後も県農業総合センターなどと共同で、特産品の大豆に放射性セシウムが濃縮しないような栽培方法を研究している。

 かねて人形浄瑠璃への関心があり、昨年6月、知人の紹介であわ工芸座へ。月1回、後藤俊子座長(50)=徳島市紺屋町=らの指導を受け、人形の動かし方を学んでいる。
 福島公演は、後藤座長が練習の合間に、伊藤さんから福島を支援するために研究を続けていることや復興が進んでいない現状を聞き、感銘を受けたのがきっかけだった。

 公演は4月21日に文化財保存施設「福島市民家園」で開き、伊藤さんら10人が出演する。「傾城阿波の鳴門 順礼歌の段」と、阿波踊りを題材にしたオリジナル作「蜂須賀公祭(まつり)由来」、五穀豊穣(ほうじょう)を祈る「寿式三番叟(さんばそう)」を上演する。

 伊藤さんは「原発内の放射線量は依然高く、事故は収束していないが、国民の関心は薄くなってきている。一人でも多くの徳島の人たちが福島のことを気にかけてくれればうれしい」と話している。