徳島市立高校2年の女子生徒5人が、過去の南海地震を記録した古文書「震潮記(しんちょうき)」を現代語訳した田井晴代さん=2月14日死去、享年(84)、海陽町宍喰浦=の教えを生かした防災研究に取り組んでいる。5人は、昨年12月に田井さん宅を訪れ、地域ぐるみの津波対策の大切さを学んだばかり。突然の訃報に驚きながらも「県民への防災啓発に情熱を注いだ田井さんの思いを引き継ごう」と決意を新たにしている。
5人は、徳島市立高校がある沖洲地区の震災後の復興計画作りをテーマに昨年7月から研究を始めた。前年の2年生が進めてきた、震潮記に書かれた津波避難時の教訓を同地区に生かす研究を引き継いだもので、震潮記について学ぶため昨年12月29日に海陽町の田井さん宅を訪ねた。
田井さんは震潮記を研究していることを喜び、貴重な原本を見せてくれたり、一緒に宍喰地区の津波避難路を歩いたりしながら「常に震災を意識して訓練を怠らないように」「災害に備えて日頃から住民が交流することが大切だ」などと教えてくれた。
こうした助言を取り入れ、沖洲地区住民から復興計画への意見を聞こうとした矢先に田井さんの訃報が舞い込んだ。5人は、優しかった田井さんの死を悲しみながら「先人の教訓を伝え続けた熱意を受け継ぐのが私たちの使命ではないか」と話し合った。
今後は住民の意見聴取を経て研究成果をまとめ、17日に京都大(京都市)である、近畿の高校生らが科学研究の成果を競う大会に出場。震潮記の記述や田井さんから学んだ津波防災の心構え、住民を交えた復興計画作りの重要性などを紹介する。
研究チームメンバーの香川尋美さん(17)は「大会では、田井さんが受け継いできた徳島の先人の教訓を全国に発信し、1位になって恩返しができれば。市高生が震潮記の研究成果を発展させられるよう、後輩にも助言したい」と意欲を見せている。