阿波踊り事業の進捗状況を会議で報告する社員=東京都港区のキョードー東京

 徳島の夏の風物詩、徳島市の阿波踊りは今夏から、イベント企画大手のキョードー東京とグループ会社のキョードーファクトリー(いずれも東京)、施設運営管理会社のネオビエント(徳島市)の3社で構成する共同事業体が運営のかじを取る。踊りはどう変わるのか。民間委託の経緯や、事業体と主催する阿波おどり実行委員会の役割、今夏から導入される新たな事業などを紹介する。

<方針決める実行委、興業担う事業体> 

 徳島市の阿波踊りは、市観光協会と徳島新聞社の共催で長らく開催されてきた。しかし、協会の事業特別会計に4億円余りの累積赤字が発覚。主催する阿波おどり実行委員会は赤字の穴埋めに公金を投入しない方法として、今夏から民間委託することを決めた。

 阿波踊りは「伝統芸能」と「興行」両方の側面を持つ。今夏以降の運営に関しては、受託先の民間企業が主に興行分野を担い、実行委は踊りの枠組みが大きく変わらないよう開催の基本方針や受託企業を決める。受託企業は実行委が作った要求水準書に従って事業を実施する。

 具体的な役割は、実行委が踊りの日程や演舞場の数、設置場所など開催に関する方針を決めた上で受託企業から示される事業計画、予算案、事業報告などを承認。事業の検証も行う。大規模な桟敷の修繕や、開催中に巨大地震といった災害が発生した場合の補償の義務なども負う。

 受託企業は、チケット販売や広告営業、広報活動、関連業者の選定・契約、当日の会場運営など実務全般を担う。期間中の天候に関係なく毎年500万円と、黒字が出た場合はその2割を実行委に納付し、契約通りの業務ができなかった場合は違約金3千万円が課せられる。赤字の場合は全て受託企業が責任を負う。

 両者の契約は5年ごとに更新される。2023年度までの5年間はキョードー東京やネオビエントなど3社の共同事業体が受託企業に選ばれた。リストバンド型フリーパスの試験導入など新たな取り組みを始めるが、開催のノウハウがなく、準備期間も短いため、今夏は基本的に従来を踏襲した形で運営される。

<民間委託 柔軟性やコスト減に期待>

 民間委託の最大のメリットは、収支が赤字でも税金投入をゼロに抑えられる点にある。

 従来は赤字が出た場合、最終的に徳島市が補償することになっていたが、今夏からは受託企業が全責任を負う。県や市から公金が投入されるのはシャトルバスなどの運営補助のみ。黒字が出れば、その一部は基金に積み増し、桟敷の修繕に充てられる。

 民間活力の導入で、新しいアイデアが取り入れられることも利点の一つだ。今夏からは早速、チケットへの特典付与やフリーパスチケットの導入など従来にはなかった取り組みが始まる。

 行政主導の運営とは異なり、素早くさまざまな事柄に対処できるほか、人件費などのコスト削減も期待できる。

 一方、受託企業は5年ごとに契約を更新するため、企業が交代することになった場合、蓄積したノウハウを次の企業にどう継承させていくかが課題となる。業績悪化などに伴い、契約期間を満了しないまま踊り事業から撤退する万一の事態が起これば、時期によっては開催が危ぶまれる恐れもある。

<事業体構成する民間3社とは>

 <キョードー東京&キョードーファクトリー>キョードー東京と、グループ会社のキョードーファクトリーは、有名ファッションブランドの路面店が軒を連ねる東京都港区の「表参道エリア」中心にあるビルの4階に本社を構える。両社の社員は連携しながら業務に携わり、コンサートやミュージカル、演劇などの企画、制作、運営を主に手掛ける。

 キョードー東京は1962年設立の芸能事務所が前身で、70年に現社名になった。設立当初からルイ・アームストロングら大物海外アーティストのコンサートを手掛け、66年にはザ・ビートルズの日本武道館公演を成功させた。

 イベント会社としては最大手で、年間2000公演を主催する。キョードーファクトリーと共に広島や山形などで劇場の指定管理業務も担う。2018年7月決算の売上高は約213億円。経常利益は約6億7000万円。

 社員数はキョードー東京が約50人、ファクトリーが約80人。阿波踊り事業では、主に収入に関連する業務を担い、両社の計20人が「チケット販売・マーケティング」「宣伝・協賛」「団体営業」「制作・運営」のチームに分かれて取り組んでいる。

 週1回程度、全体会議を開き、各チームが進捗状況を報告。課題を共有しつつ、修正を重ねている。7月22日に行った会議では、チケットの販売向上策が議題に上がり、県内の15万4000世帯にチラシをポスティングする案などが出された。

 <ネオビエント>2005年に設立され、徳島市南末広町に本社を置く。イベントの企画運営や指定管理業務などを手掛け、従業員は82人。

 06年から板野町のあすたむらんど徳島や鳴門市の展望施設「渦の道」、大鳴門橋架橋記念館エディの指定管理業務を担う。17年からは徳島市の新町川水際公園周辺で開かれている産直市「とくしまマルシェ」の運営を引き継いだ。昨年度の売り上げは9・7億円で、経常利益は41万円。

 16人が主に徳島での準備作業に関わり、業者との契約や踊り連の出演プログラム作成、交通規制といった各種申請、対面販売所の運営などを進めている。

 社名は「ネオ」(新しい)と「ビエント」(スペイン語で「風」の意味)を組み合わせた造語。