マグニチュード(M)9クラスの南海トラフ巨大地震が発生すれば、徳島市周辺は大神子海岸から徳島阿波おどり空港(松茂町)までの広い範囲が高さ5メートル級の大津波に何度もさらされる―。徳島大大学院の馬場俊孝教授(津波防災学)が、巨大地震発生から6時間後までの県内沿岸7市町を襲う津波の動きを予測した動画を作った。動画からは、県内沿岸部が広範囲で壊滅的な被害に遭い、浸水も長時間に及ぶことが見て取れる。
想定によると、徳島市周辺では、最大波となる第1波が地震発生から四十数分後にマリンピア沖洲の東端に到達。間もなく高さ5メートル級の津波が沖洲地区の一部をのみ込み、吉野川や新町川などの河川を一斉に遡上(そじょう)し始める。その数分後、川内地区から徳島阿波おどり空港周辺にかけて高さ5メートルを超える津波が押し寄せ、沿岸集落に甚大な被害をもたらす。
地震から2時間後、吉野川では不動地区付近、勝浦川では丈六地区付近、今切川では川内町の共栄橋付近まで津波が遡上。沖洲、津田各地区や川内地区の東部には浸水被害が相次ぐ。内陸部でも河川をさかのぼった津波により、川沿いの集落で家屋倒壊などの被害が出ることが想定される。
3時間15~20分後には、吉野川河口付近や大神子海岸など広い範囲に5メートル級の津波が襲来。各河川ではさらに上流部まで津波がさかのぼる。地震から6時間近くが経過しても断続的に3メートル程度の津波が沿岸地域で相次ぎ、空港周辺や沖洲地区東部などは3メートル以上の浸水に長時間見舞われる恐れがある。
馬場教授は「あくまでもシナリオの一つだが、津波は長時間にわたって被害を及ぼすことを知ってもらいたい。河川を伝わって思わぬ所から浸水することもあるため、揺れを感じたらまずは水場から離れ、高台に避難してほしい」と話している。
≪想定方法≫国土地理院の地形データを基に、想定される津波の速度や水位変化などを計算した。津波の動きは馬場教授が開発した津波解析ソフトを使用している。潮の干満や堤防の決壊率などの前提条件が違うため、徳島県の被害想定と結果が異なる部分がある。