徳島大環境防災研究センターが、地震による被害を早期に推定できるシステムの開発に乗り出した。徳島県内の家庭や企業に小型の地震計を設置してもらい、観測データを解析。地域ごとの被害状況を予測して行政などに提供し、初動対応に役立てるという構想で、数年後の本格運用を目指している。
構想によると、自動で情報を送信する通信端末を取り付けた地震計で、平時は人間では感知できない建物の微動を観測。各建物の揺れやすさや揺れ方のデータを取る。
地震発生時は揺れの加速度などが観測され、それらのデータを基に建物ごとの損傷具合や倒壊リスクなどを計算し、広域的な被害状況を解析。情報提供はスマートフォンを通じて県民や国、県などの関係機関に自動送信する形を模索する。
2018年度は常三島キャンパスの各建物に地震計を設置し、データの取得を試験的に始める。その後、県内でモデル地区を選定し、地域全体のデータを集める。将来的には趣旨に賛同する県民を募るなどして、データを増やしていく考え。
地震計の設置が進めば、南海トラフ巨大地震の被害想定などを使い、地域別の被害をシミュレーションすることもできる。
阪神大震災や東日本大震災では、地震発生直後、被害状況の把握が難航した。徳島県内でも南海トラフ巨大地震などの大規模災害が懸念される中、効率的な初動対応につながるシステムを作ろうと計画した。
開発を進める中田成智准教授(耐震工学)は「運用できれば夜中に地震が起きても朝を待つことなく、ある程度の被害を算出できる。県内全域にシステム網を広げていきたい」と話している。