取り壊しが計画されている徳島県小松島市中田町脇谷の金長大明神(通称・金長神社)の存続を願い、都内の水墨画家、本田一誠さん(56)が金長だぬきの絵を描いて奉納した。存続を求める市民グループ「金長神社を守る会」の活動を知り、応援しようと思い立った。水墨画は17日、社殿に飾り付けられた。
作品「金長狸(だぬき)」(F30号)は、野性味あふれる鋭い眼光のタヌキを正面から力強く描いている。本田さんは6年前、弟に勧められて描いたタヌキがインターネットで高い評価を受けたことが縁で水墨画を始め、2017年度全国公募日美展(国際文化カレッジ主催)で内閣総理大臣賞を受賞するまでになった。
画業のきっかけとなったタヌキに強い愛着がある本田さんは2月、短文投稿サイト・ツイッターで金長だぬきゆかりの神社が存続の危機にあることを知った。「自分にできることで応援したい」と同会に寄贈を申し出、5~6時間で新作を描き上げた。
奉納式には同会会員や地元住民ら約20人が出席。地蔵寺の服部宏昭住職(63)=同市松島町=による祝詞の後、同会発起人の松村優子さん(44)=同市大林町岩戸、会社員=と2人で除幕した。迫力ある水墨画に感動した参加者は「市民の心のよりどころを守らねば」「存続へ少しでも力になりたい」などと結束を誓い合った。
松村さんは「すてきな絵を贈ってくれ、感謝の気持ちでいっぱいです」と喜んだ。水墨画は社殿奥の側壁に掛けて展示される。
奉納式に来られなかった本田さんは「自分で描いたというより、何かが自分に描かせたという不思議な感覚がした。これも金長様のお導きだと思っている。多くの人が金長神社に関心を持つきっかけになれば」と話している。