<あなうれしとにもかくにも生きのびて戦やめるけふの日にあふ>。つらい戦いが終わったとはいえ、これだけ無邪気になれるものなのか。そんな一首を、『昭和は愛し 「昭和萬葉集」秀歌鑑賞』(講談社)で見つけた

 「けふ」とは74年前の今日、8月15日、終戦の日。誰のざれ歌か、と作者を確かめたら高名な経済学者で驚いた。『貧乏物語』などの著作で知られた河上肇である

 気分としては、もう少し奥の深いものだったと勝手に想像していた。例えば、こういう具合である。<くつわ虫なきなく夜半を目をさめてのこるいのちを思ふこのごろ>。これは小説家・海音寺潮五郎の作。戦中、陸軍報道班員として徴用された、戦争の実相を知る人だ

 河上は思想犯として何度も投獄された。軍国主義からの解放、だからこその「あなうれし」なのだろう。それもつかの間、半年たたずに亡くなった。栄養失調ともいわれる

 終戦への反応は実際、さまざまだった。悲しみにうちひしがれた人もいる。怒りに震えた人も。体験した者にしか分からない空気が流れていたようである

 そもそもの始まり、戦争への道。<もう二度とだまされぬぞ と思ひながら今も何か だまされてゐるやうな気がする>新藤達三。体験者が少なくなった今、われわれは簡単にだまされる、「やうな気がする」。