徳島県阿波市出身の映画監督三木孝浩さん(43)の新作「坂道のアポロン」が、10日からイオンシネマ徳島とシネマサンシャイン北島など全国で公開されている。1960年代の長崎県佐世保市を舞台に、男子高校生の友情や恋愛、ジャズとの出合いを描く。三木監督に、作品の見どころや若者へのメッセージを聞いた。

映画「坂道のアポロン」の一場面

-見どころは。

2人の高校生(薫と千太郎)が、視線を合わせて生き生きとセッションする姿を見てほしい。ジャズのように、世代を超えて楽しめる映画です。役者が実際に演じる早弾きにも注目してほしい。

-原作の感想は。

登場人物の関係性が特に面白かった。薫と千太郎が、音楽を通して「自分はここに居ていいんだ」という存在意義を確認し合う。その強い結び付きに引かれた。

-どんな演出にこだわったのか。

光の陰影の強さですね。高度経済成長という時代背景や、佐世保の街が持っているエネルギーを表現した。男同士の友情を超えた絆を描くため、ラブストーリー風のシーンもちりばめました。

-薫と千太郎は、ジャズにのめり込んでいく。自身の高校時代の経験と重なる部分があるのでは。

新たに出合った世界の面白さに気付き、わくわくする感覚はよく分かる。それが自分にとっては映画でした。高校生の時、映画同好会で友人とミュージックビデオを作っていました。短い映像を撮っただけで「楽しい」と感じたのと同じ。当時を思い出して、製作中も楽しかった。

-過去の作品はラブストーリーが多かった。新作は友や音楽との「出会い」がテーマだ。

どの作品でも、若い登場人物が、自分のあるべき姿に向かって成長していく様子を描きたいと思っています。理想を目指してもがき、たくましくなっていく若者の姿はいとおしい。

-60年代と現在の若者の違いについて。

今はインターネットを使えば、共通の趣味を持つ人と簡単につながれる。顔の見えない交流であっても、孤独感が解消されていい。一方、60年代は対面しないとコミュニケーションが取れない。そんな時代が、タイプの違う2人を結び付けた。他者と向き合うことで生じる「化学反応」を、今の若者に面白がってほしいと思う。

-徳島の若者にメッセージを。

音楽や映画など、若い時の出合いを大切にしてほしい。何かにもがいている人に、新作を見てもらえれば。きっと前向きな気持ちになれるはずです。

《60年代の佐世保市が舞台》

小玉ユキの人気コミック「坂道のアポロン」が原作。ピアノが好きな主人公・西見薫(知念侑李)は、転校先の高校でドラムが得意な川渕千太郎(中川大志)と出会う。優等生の薫と不良の千太郎はジャズのセッションを通じて絆を深めていく。舞台は1960年代の長崎県佐世保市。2人の友情や同級生、迎律子(小松菜奈)との恋愛を描く。

三木孝浩監督=徳島市内

みき・たかひろ 1974年阿波市生まれ。阿波高、早稲田大卒。人気アーティストのミュージックビデオを手掛けた後、2010年に「ソラニン」で長編映画監督デビュー。主な作品に「僕等がいた」(12年)、「青空エール」(16年)など。