佐川恭一さん

 昨年の受賞作を読んだ時、いろんな作風の小説が受け入れられるコンクールだと悟った。賞を取ってやるという強い気持ちまではなかったが「今年は絶対に応募すると決めていた。面白いと思ってもらえて良かった」。創設2年目の阿波しらさぎ文学賞に輝き、笑顔を見せた。

⇒第2回阿波しらさぎ文学賞 大賞に佐川さん(大阪)の「踊る阿呆」

 受賞作「踊る阿呆」は、青春ユーモア小説。今年の春先、テレビ番組で歴史や成り立ちを詳しく紹介しているのを見て、テーマを阿波踊りに決めた。「もてない男子同士が、ダンス対決したら面白いかなと」

 進化させたハイブリッド阿波踊りを考案した徳島出身の主人公が、江州音頭を現代的にアレンジさせた滋賀出身の若者とダンスバトルする場面は、最大の読ませどころ。「やがてライバル心を超え、2人に理解し合う瞬間が訪れる。そこをできるだけふざけ切るタッチで書いた」

 滋賀県出身。江州踊りをする男子は作者自身の投影らしい。小学校の時に踊った記憶が受賞作のアイデアへとつながった。

 京都大文学部卒。社会学専修で、卒論のテーマは「競馬」という変わり種だ。どんな馬が人気があったか、時代背景などを交えてまとめた。小学生時代にはまった競馬ゲーム以来の情熱を学問に昇華させるユーモアは、その頃から持ち合わせていた。

 好きな作家は大江健三郎。「自分とは全く作風が違うけど、切れ味がよく、とことん書き切るさわやかさがある」と魅力を語る。

 本業は公務員。普段は真面目なイメージで働き、通勤途中や夜中に小説を執筆している。大阪府枚方市で妻と2歳の長女と3人暮らし。34歳。