がんはもはや死に直結する病気ではない。そうした認識を社会全体に浸透させるためにも、医療技術のさらなる進化が欠かせない。

 国立がん研究センターが公表した最新の生存率調査結果で、2009~10年にがんと診断された患者の「5年後生存率」は全体で66・1%となり、08~09年と比べて0・3ポイント向上した。

 新たな薬や治療法の効果が早い段階で把握できる「3年後生存率」も改善傾向が続いている。

 年間100万人が、がんと診断される時代である。このうち3人に1人は20~64歳の現役世代だ。

 そこで大切なのは、がん患者へのサポート体制の充実だろう。仕事と治療が両立できる環境整備を急ぎたい。

 がん治療は長期の休業を伴う入院から、短期入院や通院治療が主流になっている。個人差はあっても、がん患者が仕事をしながら治療を続けるのは十分可能だ。

 ただ、企業の受け入れ態勢が思うように進んでいない。働きながら通院治療するための「短時間勤務制度」や「在宅勤務制度」といった仕組みの普及が遅れている。

 自身のキャリアへの影響を気にして、がんを社内で公表せずに働く患者もいるというから悩ましい。

 そんな中、主治医と患者、企業の橋渡し役を担う「両立支援コーディネーター」が注目を集めている。国は関係機関と連携し、患者一人一人の希望に沿った支援を促すコーディネーターの養成を着実に進めてもらいたい。

 働きたい患者を受け入れる職場環境を整えるには、当事者からの情報発信も重要だ。治療や仕事、子育てに関する体験を積極的に発信し、ありのままの患者像を社会に広めてほしい。

 一方、食道がんや肺がん、肝臓がんなど、5年後の生存率が依然として50%に届かないものもある。とりわけ治療が難しい膵臓がんは9・6%にとどまる。

 それでも早期の段階で治療を始めれば、生存率は確実に高まる。がんの早期発見を可能にする、より効果的な検査技術の開発が待たれる。

 新たな治療法も進化している。14年に販売された「オプジーボ」をはじめとする「免疫チェックポイント阻害剤」の登場で、これまで治療が難しかった進行がん患者に選択肢が生まれた。

 患者の遺伝情報から最も効果的な治療法を選び出す「がんゲノム医療」も全国規模で研究が進んでいる。

 残念なのは、新たな薬や治療法が患者に届くまでにさまざまな壁があることだ。

 日本の学会は、個別のがん治療法をまとめたガイドラインを数年に一度しか改定しないという。このため新薬が保険適用になっても、すぐには患者に使われない。

 国は新たな検査技術や治療法の迅速な活用を促す仕組みを整えるべきである。