日米貿易交渉が大詰めを迎えている。

 米ワシントンで21日に始まった閣僚協議では、自動車や牛肉などの重要品目で決着できるかどうかが焦点だ。

 日米両政府は、近く本格化する米大統領選で実績をアピールしたいトランプ大統領の意向に沿い、来月末までの大枠合意を目指している。

 だが、貿易のルールづくりは、国民の生活に直結する問題である。時の政権の都合ではなく、生産者や消費者の利益を第一とし、急がず着地点を見いだしてもらいたい。

 日米交渉は、米国が2017年に環太平洋連携協定(TPP)から離脱したのを受けて、昨年8月に始まった。

 米国が最も重視しているのは、牛肉や豚肉、小麦、乳製品など、日本に輸出する農産物の関税である。TPPの発効でオーストラリアやカナダの関税が下がり、米国産が不利になっているためだ。

 米中貿易摩擦により、対中輸出が激減した事情もある。農家の反発が強まっており、トランプ政権には、日本の市場開放という成果を早く見せたいとの焦りがあるようだ。

 これまでの交渉では、日本の農産物の関税引き下げはTPPの水準を限度とすることで一致した。

 トランプ氏が「縛られない」と述べるなど、TPP超に言及する場面もあったが、一方的に離脱した米国を優遇すれば、11カ国が参加するTPPの枠組みが崩れてしまう。日本の農家が被る打撃を考えても、TPPを超えないとしたのは当然である。

 ただ、トランプ氏は大統領選で農業票を頼りにしているだけに、予断は許さない。

 日本は、米農産物の関税を段階を踏まずに一気に引き下げ、先行して下がっているTPP参加国と同じにする案も検討している。こうした手法を織り交ぜ、日本のペースに持ち込むことが肝心だ。

 一方、日本が米国に要求しているのは、自動車や関連部品の関税引き下げ、撤廃である。交渉では、それらの市場開放が農産物引き下げの前提だと主張してきた。

 これに対し、米国は日本からの自動車輸入を安全保障上の脅威と位置付け、難色を示している。受け入れる場合でも、輸入急増を防ぐ数量規制を課すとの観測もある。

 しかし、日本に開放を迫り、自国の産業は保護するという身勝手は認められない。TPP並みを日本に求めるなら、米国もその水準に立ち返るべきである。

 米国は前政権時代、TPPに合意した際、現行2・5%の乗用車の関税を段階的に下げて発効25年目で撤廃、25%のトラックは30年目で撤廃すると約束していた。

 トランプ氏は、日米安全保障体制の見直しに言及するなど、日本を盛んにけん制している。貿易交渉を優位に進めたい思惑があるのだろうが、日本は揺さぶりに動じず、自らの立場を堂々と主張する必要がある。