香港から中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改正案を巡り、完全撤回を求める香港のデモが3カ月目に入った。

 デモ隊の一部は、空港を占拠して運航をマヒさせるなど過激化している。今週初めに開かれた抗議集会とデモには、主催者の発表で約170万人が参加した。負傷者が出るほど激しい警察隊との衝突も頻発しており、双方の溝は深まる一方だ。

 条例改正案は中国政府の意向が強い。解決方法はもはや一つに絞られる。香港政府は改正案の完全撤回を認めるよう、中国政府を説得すべきである。

 香港が1997年に英国から返還された際、中国は「一国二制度」と「高度の自治」を香港に約束したにもかかわらず、これまで度々踏みにじってきた。

 5年前の「雨傘運動」と呼ばれる大規模デモは記憶に新しい。反中派を香港行政長官にさせない選挙制度に対する抗議行動だったが、政府が強引に押し切った経緯がある。

 今回の抗議行動は、政治的な問題と距離を置いていた人々も加わり、大規模に発展している。大勢の市民が「中国政府の介入で自治がいよいよ脅かされる」と危機感を強めたからにほかならない。

 デモの長期化は香港経済に打撃を与えている。日本や米国など約30の国・地域が香港への渡航者に注意を呼び掛ける情報を出し、8月初旬の観光客は前年より3割余り減った。小売売上高も2桁の減少率になる見通しだという。

 徳島県にとっては、11月から来年3月まで徳島空港―香港間で運航する季節定期便への影響が気掛かりだ。デモが長期化すれば客足が鈍るのはまず避けられない。

 通年運航の実現に向けて実績を挙げたいところだが、県は「現状では香港観光を積極的にPRできない」と行方を見守るしかないという。

 ここにきて最も懸念されるのは、中国が武力介入も辞さない姿勢をちらつかせていることだ。

 香港に隣接する中国広東省深圳市の競技場に、100台を超える軍用車らしき大型車両を集め、数百人の武装警察部隊(武警)が訓練を行っている。抗議行動を威嚇しているのだろう。

 中国では30年前に天安門事件が起きた。学生らの民主化要求デモを当局が武力弾圧し、多数の死傷者を出して世界に衝撃を与えた。

 中国政府は今も正当化しているが、香港で同様の実力行使に踏み切るようなことがあれば、国際社会の厳しい非難は免れようがない。

 デモ隊にしても、公的施設の破壊行為などさらに過激化が進めば、武力制圧を正当化する口実を与えることになる。平和的な方法で世論に訴える必要がある。

 中国、香港両政府は武力を行使せず、話し合いで事態を収束させる。それが国際社会の要請である。