つるしびなを作る藤本さん(左)と桂木さん=勝浦町坂本

つるしびなを作る藤本さん(左)と桂木さん=勝浦町坂本

 勝浦町内の通りをひな人形で飾る「おひな街道」(19日まで)で、藤本美佐恵さん(64)=同町棚野=と桂木みち江さん(66)=同町三渓=が、つるしびな200個余りを手作りして商店や民家の軒先を彩り、訪れた人の目を楽しませている。高齢化などで飾り付けができない家庭が増えつつあることに危機感を持ち、今年初めて企画した。

 つるしびなは、直径5センチのゴムボールに造花のサクラをいっぱいに貼り付け、ビーズなどと一緒に糸を通している。坂本地区の古い町並みと勝浦中央商店街(横瀬)、西岡商店街(沼江)に地元住民と一緒に飾った。勝浦中央商店街には5メートルの巨大おひなさま、西岡商店街にはおひなさまとお内裏様を描いた横断幕も用意した。

 藤本さんは手先が器用で、手作りのひな飾りが町の一大行事「ビッグひな祭り」で展示されるなどしていた。5年ほど前、町商工会の職員だった桂木さんが持ち掛け、一緒に手作りの飾りや雑貨の販売を始めた。

 桂木さんがデザインを考えて藤本さんが形にする。着物で人形や動物をかたどったつるしびなは、今では同町生名の道の駅「ひなの里かつうら」の人気商品となっている。

 一方で、2人が気になったのが、おひな街道だった。ビッグひな祭りの開催に合わせた恒例行事だが、西岡商店街では高齢化から人手が足りなくなり、飾り付けをする店舗が少なくなっていた。他の地区でもそんな兆しが見えていた。

 「来てくれた人を歓迎して楽しんでもらわないと」。おひな街道を“プロデュース”しようと、住民に協力を申し出るとともに、華やかな雰囲気を演出するため、新しいつるしびなを考案した。

 地元住民の活力にもつながっている。西岡商店街の大西千香枝さん(95)は、かつて営んでいた日用雑貨店の前を飾るのが楽しみだったが、手仕事が難しくなって5年ほど前からやめていた。2人に刺激を受け、今年はデイサービスで塗り絵に挑戦。軒先のガラス戸に20点を飾った。

 2人は「町おこしのために始まったビッグひな祭りと同じ。自分たちが動かしていくんよ」と話しており、来年は若者にも活動に加わってもらう考えだ。