「マイノリティーの人々にスポットを当てた小説を書いていきたい」と話す桐本千春さん=徳島新聞社

 徳島をテーマに全国公募された掌編小説コンクール「第2回徳島新聞 阿波しらさぎ文学賞」(徳島文学協会、徳島新聞社主催)。「胸をつらぬく」で徳島新聞賞に選ばれた桐本千春さん(55)=徳島市中島田町、看護師=と、「いらっしゃいマンション」で徳島文学協会賞に決まった宮月中さん(25)=徳島市南前川町、徳島大大学院生=に、作品に込めた思いを聞いた。2回に分けて紹介する。

 主人公は園瀬川の河川敷で40年以上、死体を焼く「焼き場守」を仕事にしてきた。誰に称賛されることもなく、ひたむきに励み、矜持と哀愁を持っていた。受賞作では、その男を通じて「人間の真実」を問い掛けた。

 「参考文献を見ず、現地調査もせず、空想だけで筆を運んだ作品。重いテーマだけに入賞しないと考えていた。審査員の懐の広さと深さに感謝したい」と頬を緩ませた。

 着想は10代の記憶にさかのぼる。古里の兵庫県赤穂市の河川敷で大昔、火葬に従事する人がいた史実を知った。彼らを想像し、頭の中に存在させ続けた。結婚して徳島に住み、園瀬川の風景を眺めるうちに物語が浮かんできた。

 5月から書き始め、約1カ月間で仕上げた。分かりやすさにこだわりながらも、筋書きをなぞるだけの文章にならないよう注意した。比喩や倒置を用いず、伏線のストーリーを作らなかった。特に重視したのは、人生で学んだ哲学を物語に反映させることだった。

 それらの哲学は主人公の言葉として後半、発せられる。「自死を選んだ者、罪人となり果てた者でも死ねばみな仏になる。綺麗な者も醜い者も変わらん」

 主人公の仕事を「死者の魂を送る神聖な仕事」と見て、火葬が始まり「魂の門出を見送るのも焼き場守の役目」と言わせている。

 タイトル「胸をつらぬく」は女性の死体を焼く最中、反り返って立ち上がった体の胸を鉄の棒で刺し抜いて倒す場面から取った。この女性にもドラマがあったのでは、と興味を抱かせるラストシーンだ。

 約10年前、3人の子育てが一段落したため児童文学の創作を始め、5年前から小説を書き始めた。牛飼いの男やごみ屋敷の老婆などマイノリティーの人々にスポットを当て「自分だけが築いた世界観を表現している」。受賞作は自身10作目の小説だった。

 作品は全て懸賞に応募してきたが落選を繰り返した。絶望と挫折を味わいながら今年3月、人間の内面に潜む性的衝動をテーマにした「紅い烙印」が三田文学新人賞の第2席に輝き、表舞台に立った。

 最近、北欧の映画に夢中だ。「本能的ともいえる人間の真実の姿に共感が持てる。小説のヒントにもなる」と絶賛する。日々の看護の仕事や、夫と楽しむ休日の家庭菜園も創作に役立てながら、次の作品に取り掛かっている。