徳島県西部2市2町の急傾斜地農法「にし阿波の傾斜地農耕システム」が、農林水産省から国連食糧農業機関(FAO)の「世界農業遺産」の国内候補地と、「日本農業遺産」に選ばれた14日、地元の関係者や農家は歓喜に沸いた。世界農業遺産への登録に大きな一歩を踏み出し、保存や伝承への意欲を新たにしていた。
2市2町などでつくる「徳島剣山世界農業遺産推進協議会」の事務局を務めるつるぎ町商工観光課。午前9時40分ごろ、職員4人が農水省のホームページで発表された認定地域を確認すると、「やった」「よかった」と声が上がった。
初申請した2014年から協議会の事務局長を担当している篠原尚志課長は「率直にうれしい。世界農業遺産の認定に向けて、さらに活動を進めていきたい」と意気込んだ。
農家にも喜びの声が広がった。天日干ししたススキなどを肥料として保存する「カヤグロ」を作るなど、農法をPRする活動を続ける東みよし町の住民団体・西庄良所会の平野重秋会長(65)=同町西庄、農業=は「言葉が出てこない。これまでの頑張りが認められたというのがありがたい」と目を細めた。
「注目度の高まりが期待できて、活動の大きな励みになる。新たな商品開発へのやる気が湧いてきた」と話すのは、三好市東祖谷の急傾斜地で雑穀の栽培に取り組む祖谷雑穀生産組合の杉平美和組合長(59)=同市東祖谷久保、団体職員。
地域の活性化を期待する声も。美馬市穴吹町口山で茶や雑穀の生産に取り組む小泉靖雄さん(74)は「急傾斜地農法に興味を持つ人が増えることを期待している。過疎や高齢化が進む地区に活気が生まれるようになってほしい」と言う。
ソバ畑を観光農園として開放する、つるぎ町貞光猿飼の西岡田治豈さん(76)は「傾斜地での農業を途絶えさせられないという思いが強くなった」と継承への思いを述べた。