打ち上げられた花火で流れが色づき、闇に浮かび上がる柿原堰=阿波市吉野町

 阿波市吉野町と吉野川市鴨島町の間の吉野川にまたがる柿原堰は、川の水を用水へ引き込むために造られた利水用の固定堰だ。

 明治末期、阿波藍は化学染料や輸入品に押されて衰退していく。吉野川北岸に広がる藍畑を水田へ転作するには、水が必要だった。そこで板名用水が計画され、堰も造られた。

 1907年に全長1150メートルの仮の堰ができた。後に750メートル分を石積みに改修し、19年に完成した。下流にある第十堰と並ぶ大きさである。

 渇水期に干上がることもある第十堰と違い、柿原堰の上を水が流れていない光景は見たことがない。特に、くの字に折れ曲がった北岸部分は常に水が流れ、春には大量の稚アユが上流を目指す光景を目にする。

 筆者にとって実家からさほど遠くない場所にあり、子どもの頃からの遊び場だった。それだけに、見慣れた光景をどう撮影するか、少しばかり思案した。

 ちょうど吉野川市の花火大会が近づいていた。花火の光に照らされ、暗闇に浮かぶ堰を狙った。ところが、花火撮影に必携のフィルターを忘れてしまう。あちゃー。フィルム時代のようにどう写るか予測できないドキドキ感を味わったものの、100年にわたって機能し続けてきた堰の夜を撮影できた。