写真を拡大 ワイドFM対応ラジオの周波数帯域

 ラジオ局がAM放送を廃止してワイドFMに転換することを総務省の有識者会議が容認した-。8月末にこんな気になるニュースが報じられました。ラジオ局の経営改善などが目的とのことで、早ければ4年後の2023年にもAMを停波する局が出てくる可能性があるそうです。仮にワイドFMだけになった場合、現在持っているラジオやカーオーディオで放送は聴けるのでしょうか? 電波の届く範囲がAMより短いとのことですが、徳島県民にも人気が高い大阪にある放送局の番組は聴けるのでしょうか? 早速、調べてみました。

 ■ワイドFM対応ラジオかインターネットでなければ聴けない

 ワイドFMについて説明した総務省のホームページなどによると、AMは電子機器の普及や建物の堅牢化が原因で都市部での難聴化が進んでいるのに加え、送信設備の防災対策や老朽化、ラジオ局の厳しい経営環境といったさまざまな課題に直面しています。

 ラジオは災害時の情報伝達手段として重要なため、災害・難聴対策としてAMと並行してワイドFMによる補完放送を行う局が増えているのですが、2つの設備を維持することが経営をさらに圧迫していることが、今回の「一本化」容認の背景にあるようです。

 AMは電波が海外まで届くなど聴ける範囲が広い半面、建物内では聞こえにくく、大きなアンテナ設備が必要です。FMはAMと比べて設備が簡易で、建物密集地でも受信しやすいそうですが、電波が届く範囲は数十キロから100キロ程度と短くなっています。

 ワイドFMの周波数は従来のFMの76.1~89.9メガヘルツより高い90.0~94.9メガヘルツ。このため、対応周波数帯域が90.0メガヘルツ未満しかない従来型のラジオでは聴くことができず、新たに対応機器を購入する必要があるそうです。

写真を拡大 【左】低価格が魅力のオーム電機のRAD-P2227S-W【右上】外付けスピーカーで放送が大音量で楽しめる東芝のTY-SPR7【右下】災害時に役立つさまざまな機能が付いたソニーのICF-B09

 対応ラジオにはどのような製品があるのでしょうか。さまざまなタイプを取りそろえているヤマダ電機テックランド徳島本店(徳島市)によると、店頭には880円から1万2800円(いずれも税抜き)までのモデルが並んでいて、最も安い880円のものがよく出ているそうです。

 AMと比べてノイズが少ないといわれるFMですが、国産で高価格帯の製品の方がチューナーの品質が良く、音声がクリアに聞こえるのだとか。このほか、災害用で手回しの充電器やライトを備え、蓄電池としてスマートフォンの充電もできるという多機能モデルもありました。

 ラジオは自宅や職場だけでなく、車の運転中に聴くという方も多いでしょう。2016年の熊本地震では避難所ではなくマイカーで避難生活を送った人の多さが話題になっていましたので、多彩なカー用品を扱うスーパーオートバックス徳島問屋町(徳島市)でも話を聞いてみました。

 ワイドFM対応機としては、ラジオと携帯音楽プレーヤーなどの再生に機能を絞った7992円の製品から、液晶画面が付いてDVDが見られる3万9744円(いずれも税込み)までのモデルを取り扱っています。売れ筋は液晶付きで使い勝手が良い3万円前後のものだそうです。

写真を拡大  【上】DVDも楽しめるパイオニアのカロッツェリアFH-8500DVS【下】機能を絞り込んだカロッツェリアMVH-3500

 ラジオもカーオーディオも最近発売された製品は基本的にワイドFMに対応しているそうですが、販売店の店頭には対応していないものも一部並んでいますので、近々買い替え予定があってこの機会にワイドFMを聴けるようにしたいという方は担当者に確認した方がよいでしょう。

 このほか、既にお使いの方も多いでしょうが、パソコンやスマホでラジオが聴けるアプリ「radiko(ラジコ)」でワイドFMを聴くという方法もあります。居住地の放送は無料で聴けますが、県外局の放送を聞くには月額350円の有料サービスに加入する必要があります。

 FM対応ラジオチューナーとradikoの両方を内蔵したハイブリッド型スマホも一部メーカーが販売しています。ネット環境がない場所ではラジオ、ネット環境が整った所や県外の放送を聴く際はradikoと使い分けができるそうですので、複数台持つ必要がなくなりますね。

 ■大阪局の番組は徳島では対応ラジオでも聴けない可能性が高い

 徳島県内でも朝日放送の「おはようパーソナリティ道上洋三です」や、毎日放送の「ありがとう浜村淳です」をはじめとした在阪各局の番組を楽しまれているリスナーは多いと思います。AMが徳島まで届いているからですが、仮にワイドFMだけになったらどうなるのでしょう。

 朝日放送と毎日放送に問い合わせてみたのですが、答えはどちらも「ワイドFMの放送範囲は大阪府内が中心」というものでした。徳島県内でも大阪に近い鳴門市など、場所や天候によって聴けるケースもないとはいないそうですが、基本的には聴けないと考えた方がよいようです。

 ヤマダ電機テックランド徳島本店にも確認しましたが「少なくとも徳島市内では聴けないのではないか」とのことでした。在阪各局のワイドFM用のアンテナがある生駒山山頂から徳島市中心部までは直線距離で約120キロ、鳴門市でも110キロ離れていますから、難しいようです。

 ただし、朝日放送や毎日放送がAMを完全に廃止してワイドFMに一本化するといった決定がなされている訳ではありません。両社とも「これからさまざまな可能性を検討する段階で、現時点では何も決まっていない」とのことでしたので、各局の対応を冷静に見守る必要があります。

 電波が届かなければ対応機器に買い替えても県外局の放送は聴けないのですが、先ほど紹介したradikoの有料サービスなら聴けます。仮にワイドFMに一本化された場合、県外のラジオを楽しみたい方は、パソコンやスマホで聴くスタイルに変わることになるのかもしれません。

 ちなみに、徳島県の四国放送もAMでは香川や和歌山、岡山、兵庫各県などに電波が届いていてリスナーも多いそうですが、ワイドFMでは聴ける範囲が現状より狭いそうです。四国放送はAMの廃止を検討しているとのことですが、やはり現時点では最終決定はされていません。

 ■災害弱者へのきめ細かな対応を

 テレビ地上デジタル放送移行時もそうでしたが、仮にワイドFMに一本化されると機器購入や有料サービス加入で一定の出費を余儀なくされます。災害情報伝達が大きな目的である以上、聴けなくなる人が出ないよう、特に高齢者ら災害弱者へのきめ細かな説明や対策が求められます。

 ワイドFMへの移行が始まるのは数年先のことです、AMが存続される地域もあると予想されていますので、慌てて機器を購入したり、有料サービスに加入したりする必要はありません。お住まいの地域の放送局の対応や行政の支援策を見極めつつ、最適な選択をしてください。=記事中の商品価格は全て取材店舗での取材時点でのものです(R)