経営を刷新し、一からの出直しが急務だ。

 日産自動車の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)が16日付で辞任する。不当に上乗せされた報酬を得ていたことへの責任を取る形だが、実態は取締役会による解任にほかならない。

 特別背任罪などで起訴された前会長のカルロス・ゴーン被告に続き、トップが1年もたたずに、また不正で退任するという異常事態である。

 不正の基となったのは、「ストック・アプリシエーション権」(SAR)という報酬制度だ。役員が持つ自社株に対し、指定した日の株価が上昇していれば差額が付与される仕組みになっている。

 制度それ自体に問題はないが、西川氏はSARの権利行使を意図的に株価の高い日にずらし、本来より4700万円多く報酬を受け取っていた。「行使日を変更したのは担当役員」「指示はしていない」と弁明しているものの、言い逃れにすぎない。

 そもそも西川氏はゴーン被告に重用され、8年前から代表取締役を務めてきた。巨額の報酬を隠し、会社資金を私的に流用していたゴーン被告の不正を長く見逃してきた責任を問う声は強く、社長続投も疑問視されていた。

 企業統治改革として自ら率先し、社外取締役を中心に監督機能を強化した取締役会から辞任要請を突き付けられたのは皮肉な話だが、辞任はむしろ遅きに失したと言える。

 あぜんとするのは、西川氏以外の複数の役員もSAR制度で同様の不正を行っていたことが、社内調査で判明したことだ。トップとその周辺でカネを巡る不当行為が横行していたとは、経営規律が緩みきっているとしか映らない。

 自動車の販売は世界で頭打ち傾向にある。半面、電気自動車の普及で新規参入が相次ぎ、自動運転や人工知能(AI)の導入に向けた研究開発競争は激しさを増している。

 業界の環境がただでさえ厳しい中、日産は検査不正を含む一連の不祥事の影響で今年4~6月期の売上高、営業利益とも大幅に落ち込んだ。業績悪化に歯止めが掛からず、グループ全従業員の1割に当たる1万2500人を22年度までに削減する計画を打ち出したばかりだ。

 役員に甘い企業風土を改めない限り、大規模なリストラへの理解は得られないだろう。地域の販売店も大迷惑を被っている。経営陣は深刻に受け止める必要がある。

 日産は後任社長を来月末までに選ぶ。拡大路線に突き進んで独善に陥ったゴーン体質を一掃し、経営を正常化するのが至上命令となる。その姿勢を示さなければ、信頼回復はおぼつかない。

 企業連合を組むフランスの大手ルノーとの関係再構築も懸案だ。業界が世界規模の激変期にあるだけに、提携の在り方は生き残りを左右する。

 強い指導力を発揮し、求心力を高める新たなトップを選定できるかが問われている。