日本オリンピック委員会(JOC)が、これまで報道陣に原則公開していた理事会を全面的に非公開とした。6月に就任した山下泰裕会長の強い意向によるもので、組織の活性化が狙いという。

 スポーツ界は不祥事が相次ぎ、組織の透明性が問われている。中でも、JOCは五輪運動に関わる国内の統括団体であり、各団体を指導すべき立場だ。一層の透明性が求められるだけに、非公開は容認できない。

 JOCは、竹田恒和前会長の五輪招致を巡る贈賄疑惑で国民の不信を招いた。東京五輪の開幕が1年後に迫り、山下氏には組織の立て直しと信頼回復が急務とされる。

 そうしたタイミングでの理事会の非公開である。「内向き」「密室化」を懸念する声が出るのも当然だろう。

 これまでの理事会は活発な議論が行われず、形骸化していた面があったという。山下氏が危機感を抱くのは理解できる。だとしても、非公開にすれば議論が活性化する、との考えは短絡的であり、説得力に欠ける。

 スポーツ庁が不祥事対策として公表した、中央競技団体が順守すべき規範、ガバナンス・コードも「適切な情報開示」を求めている。非公開は、時代の流れに逆行していると言わざるを得ない。

 JOCによると、非公開にするのは1991年の日本体育協会(現日本スポーツ協会)からの独立後、初めて。一部の理事からは慎重な意見も出ていたが、24人の理事が出席した先月の理事会で、賛成多数で決まった。

 初めて非公開となった今月10日の理事会では、福井烈専務理事らが終了後に会見し、議事の内容を説明。理事会での配付資料は原則開示するものの、今後の審議に影響のある案件や他団体との調整が必要な資料は除く。議事概要は個人名を伏せた形で発言内容を記載し、1カ月後をめどに公表する―などとした。

 この日出席した理事の8割ほどが発言したという。山下氏は、公開していた際の理事会と比べ、議論が活発になったと成果を強調した上で、「透明性はできるだけ大事にしていかなければならない」と述べた。

 それでも、疑念は残る。今後、どこまで議論が活発になるのか、情報発信が取捨選択されることはないのか。都合の悪い情報が伏せられるような事態が発覚すれば、信頼回復が遠のくばかりか、組織としての存在意義さえ問われることになろう。

 JOCには国から多額の補助金が支給され、選手強化をはじめ五輪やアジア、ユニバーシアード大会などへの選手の派遣事業を行っている。国民の関心が高く、他の競技団体への影響も小さくない。

 現在、公開、非公開の対応は団体によって分かれている。JOCの方針転換で非公開が大勢にならないか、危惧される。JOCは早急に原則公開に戻すべきだ。