失態のスケールの大きさでは群を抜く日本年金機構である。2015年、セキュリティー対策の不備から約125万件の個人情報が流出。17年には、元公務員の妻ら約10万人に支給漏れが発覚した。その総額は598億円

 今年2月支給分では、所得税が正しく控除されず、約130万人の受給額が本来よりも少なかった。所得控除を巡る不親切な通知がトラブルのもとになっており、広報も十分ではなかったようだ

 加えて今回、年金機構が個人データの入力作業を委託した東京都内の情報処理会社が、再委託を禁じた契約に反して、中国の業者に作業を任せていた。その数500万人分。この会社、これまでに分かっているだけで30万件以上の入力ミスもあった

 昨年8月の契約締結以降、会社に数々の問題が浮上し、1月には再委託の実態も把握していた。なのに2月まで契約を続けた。「繁忙期で代わりの業者が見つからなかった」との釈明は、いかにも苦しい

 年金機構は、会社の業務遂行能力をチェックしないまま、延べ1300万人分もの個人情報の入力を請け負わせていたという。トラブルは起こるべくして起きた

 年金を頼みにする受給者を、その個人情報も含めて、あまりにも軽視している。もはや聞き飽きただろうが、年金機構にはもう一度、「ずさん」という言葉を贈る。