初孫を抱いたとき、寿命が延びた気がした。この子が大人に成長したら、どんな未来が待っているのか。自分がいるはずのない、はるか先の時間さえ、少し身近に考えられるようになった

 虐待の末、わずか5歳で未来を絶たれた船戸結愛ちゃん。法廷からの報道に心が痛い。絶命の日、母親はぐったりした娘にあわて、うそをついた。「ばあば、じいじが来てるよ」。結愛ちゃんは「うん」と力なく笑ったという

 「じいじとばあば」は何も知らず、香川県にいた。祖父は証言席で「後悔しています」と泣いた。暴行を繰り返した雄大被告が上京し、娘と孫が香川に残ったとき。「なんしよんや、はよ上京せいよ」と突き放してしまった

 夫婦仲良く家族一緒に。素朴な思いが災いになった。遊びに来れば、「じいじ、肩こった?」とトントンしてくれた孫。笑顔の裏にあった異常に気づいてやれなかった

 この世に生まれ、子ができ、孫が生まれる。その幸運な営みも、祖父の胸を締め付けた。自分さえいなかったら、娘も孫もいない。「こんな悲しい事件も起きていなかった」のではないかと

 国会を動かし、法律を変えた結愛ちゃん事件。世の「じいじとばあば」は心に刻もう。児相や警察の対応に怒っても、孫の命と未来は取り戻せない。守ってやれるのは、われわれなのかもしれない。